2026年4月7日、イノベーション創造拠点として玉川事業場に誕生した「NEC Innovation Park」。地上12階、延床面積約5万㎡を誇る建物には、全フロアに顔認証システムが導入され、省エネや災害対策などの先進技術が結集されています。この場所でどんな未来を描いていくのか、2人のキーパーソンが語ります。
パーパス実現を掲げた新拠点設立プロジェクト。働き方の制約を解消し、イノベーションを加速

オープンイノベーションで社会価値を創造する「知の創造の場」となることをめざし、新たに建設されたNEC Innovation Park。この建物には、最新のデジタル技術が導入され、協業が生まれるさまざまな空間が設計されています。
なぜNECは大規模な投資をして新拠点の設立に踏み切ったのか。そこにはパーパス実現への強い想いがあると、プロジェクトのPMOを担当したNaoki H.は語ります。
Naoki H.:本プロジェクトは、NECグループが社会価値の創造というパーパスを実現するための極めて重要なものです。NEC Innovation Parkはイノベーションを加速させるための拠点であり、パーパスの実現に向けたフラッグシップと位置づけています。建設の計画自体はコロナ禍前から進められていましたが、結果としてアフターコロナの働き方にも合致するオフィス空間が実現しました。
NECの働き方は近年、働く場所や時間を自ら選択する「プロアクティブ」なスタイルへと変化しつつあります。社会価値の創造に向けてどのように働くべきか。それを追求し、人と人がつながりイノベーションを創出する場として当拠点が誕生しました。

2007年にNECへ新卒入社したNaokiは、流通小売業担当のSEを経て、東京オリンピック・パラリンピック推進本部在籍時は顔認証案件のPM業務や新規事業開発を経験。2021年からはアセットソリューション開発室に所属しています。本プロジェクトへは、自ら手を挙げて参画しました。
Naoki H.:全社不動産の中長期的な戦略のもと、玉川事業場の未来を見据えた構想の検討が進む中、この場を起点として、NECがめざすイノベーション創造の舞台を自分たちの力でつくり上げたい。その一心で、2024年に内装・運用計画フェーズから参画しました。
私はSEとして事業部門を経験し、現在はコーポレート部門に身を置いています。双方の立場を経験しているからこそ、事業とコーポレートをつなぐ役割が担えると考えました。現場にとって本当に使い勝手がよく、多様な人材が自然と交わる。そんな拠点を、自分たちの手で形にしたいと思ったのです。
一方、住宅・家具メーカーでの営業を経て、外資系企業でオフィス関連プロジェクトやオフィスサービス運用を中心としたファシリティマネジメントを経験し、2021年にNECへキャリア入社したMasayuki O.。玉川エリアのオフィス集約とリニューアルをあわせて行う不動産最適化プロジェクトのマスタースケジュール策定から実行責任を担うリーダーとして活躍した後、内装工事・移転完遂に向けたQCDの実行責任を担うリーダーとして、Naokiと共に本プロジェクトに参画しました。
Masayuki O.:もともと私がNECへの入社を決めたのは、多数のグループ会社を擁する巨大な組織構造ならではの、難易度の高いファシリティマネジメントを経験できるからでした。
その後、本プロジェクトへの参画を打診された際も、今までにないスケールの大きさに強い魅力を感じました。ただ正直なところ、当初は不確定要素が多く不安が大きかったのも事実です。それでも、自分のキャリアにおいてこれほどのチャンスはなかなかないと考え、挑戦を決意しました。
外部で経験を積み、ファシリティマネジメントの専門性を磨いてきたMasayukiの視点からは、従来のオフィス環境が抱える多くの課題が見えていました。
Masayuki O.:当時の玉川事業場におけるオフィスの大半は、出社を前提にした個人デスクワーク中心の固定席の設計となっていました。そのため、業務内容に応じて最適な場所を自律的に選ぶことが難しく、個人の作業とチームでの協働を柔軟に切り替えにくい環境でした。結果として、組織を超えて人と人が自然につながる機会が限られてしまっていたのです。
個人のワークスペースは当たり前ですが、どの会社でも用意できます。しかし私たちがめざしたのは、個人の生産性や創造性の向上に加えチームの協働を促進し、さらには社外のパートナー企業との共創が自然に生まれる環境を提供することです。
人と人のつながりを最大化させるための戦略的な仕掛けを空間設計に落とし込み、ここを「知の創造の場」として、イノベーション創造拠点に進化させていくこと。それが、未来の働き方を体現する本プロジェクトの重要なミッションでした。
堅牢な建築基盤に、最新のデジタル技術を実装。環境性能と共創を両立した吹き抜け空間

研究開発や製品開発、事業開発の部門に所属する4,000人強が利用するNEC Innovation Park。多様な専門性を持つ人材が自然と交わり、共創を促すための工夫が随所に施されています。
Naoki H.:「あつまる」「うまれる」「ひろがる」という3つのキーワードを掲げ、常に何かが始まりそうな予感に満ちた場をめざしました。空間設計の大きな特徴は、5階から12階までが全面吹き抜けとなっている点です。内階段を設けることで上下階のコミュニケーションを誘発し、自然換気の有効活用とトップライトからの自然採光によって心地よいワークプレイスを実現しました。
各フロアには「Welcome Garden」「Teaming Area」などの多様なエリアを設け、チームによるオープンで活発なコミュニケーションによりベクトル合わせと信頼関係構築ができる場を提供しています。そして11~12階は「Innovation Hub」として社内外のメンバーが集うフロアとなっています。開放的な屋上庭園に加え、165インチのディスプレイを2枚配したスペースでは100人規模のイベント開催も可能です。社員同士はもちろん、クライアントや世界中のパートナーとの共創を加速させます。

デザイン性や開放感の追求に加え、安全性やサステナビリティにも配慮。働く場所としての機能を最適化するため、細部に至るまでファシリティマネジメントの知見が活かされています。
Masayuki O.:全フロアにひさしを設けて余分な熱や光の侵入を抑制し、照明にはスイッチレスな自動調光センサーを導入しました。さらに、NECで初めて「輻射空調」システムを採用し、エネルギー効率と快適性を両立させています。
その結果、省エネルギー性能に優れたビルであることを示す「ZEB Ready」認証に加えて、建築物の環境性能を評価する「CASBEE川崎」でも最高ランクのSランクを取得しました。
また、2019年の台風で玉川事業場周辺が水害に見舞われた経験を踏まえ、重要なインフラ設備も地上から5m以上に設置し、水害時でも稼働を維持できるよう万全の対策を講じました。加えて、オフィスビルとしては珍しい中間免震構造を2階部分に採用しています。
徹底した環境配慮と災害対策が施された建物の基盤。この堅牢なハードウェアの上には、かつてNaokiが社会実装に携わった顔認証をはじめとする、最新のデジタル技術が実装されています。
Naoki H.:社内関係各所と連携して、全フロアの入退ゲートや売店のレジなど100カ所以上に顔認証システムを導入し、スムーズかつセキュアな認証を実現しました。さらに、社員の居場所を可視化してフリーアドレスの課題を解決するソリューションや、デジタルツインを活用した各エリアの空気質・温湿度の最適化など、多彩な技術が稼働しています。また、生成AIを活用した無人AIコンシェルジュによる多言語対応や、議事録の自動化なども構想中です。
私は2015年から数年間、顔認証のPoC案件を通じて、精度向上や実運用定着化を担当していたのですが、今こうして日常的に使えるインフラとして本番実装されたことには、非常に感慨深いものがあります。
ハードウェアとデジタル技術が高度に融合しているNEC Innovation Park。将来のアップデートを見据えた設計の狙いを、ファシリティマネジメントの観点からMasayukiが説明します。

Masayuki O.:デジタル技術を柔軟に導入・更新できるよう、センシング機器を設置しやすいスケルトン天井を採用しました。あわせて、サーバーや通信機器を安定して稼働させるための専用のインフラ拠点(情報EPS)も各所に実装しています。
また、5階のDXリファレンスオフィスには、さまざまなIT情報を見える化して分析につなげる「働き方DXコックピット」や、遠隔拠点をリアルオフィスのようにつなぐ「SmoothSpace2」を設け、真のハイブリッドワークを実践する環境を整えました。ハードウェアと日々進化するデジタル技術の融合も、設計段階から意識していたポイントです。
個別ニーズを全体最適の視点で統合。組織の壁を取り払い、パフォーマンスを最大化する

オフィスという物理的な環境を進化させた先に、2人がめざした組織風土の変革。外資系企業での経験を持つMasayukiは、固定席中心だった従来の環境に「トランスペアレンシー(透明性)」かつ「オープンな環境」の良さを落とし込むことをめざしました。
Masayuki O.:NECには卓越した専門性を持つ人材がそろっている一方で、これまでの玉川事業場は固定席中心の設計空間だったため、組織の枠を超えてつながるには環境面の制約がありました。私はこれまで日系企業と外資系企業でファシリティマネジメントに携わってきた経験があります。その双方の特性を、プロジェクトで活かそうと考えました。
具体的には、外資系企業で体感したトランスペアレンシーやオープンな環境の利点を、日系企業のカルチャーや課題を理解した上でチェンジマネジメントしながら反映していくことです。そうして個々の高い専門性を結集しながら、チームとしてのパフォーマンスを最大化できる環境を提供することが、私のミッションだと考えました。
しかし、オープンな環境を推進する過程には、大規模かつ多様な組織ならではの壁が立ちはだかりました。
Masayuki O.:とくに難しかったのは、全体最適を実践することです。NECには多数のグループ会社があり、扱う事業やカルチャーも多種多様です。そのため、ある部署が良しとするルールが、別の部署にはネガティブに捉えられることもありました。
各組織の要望を優先する個別最適であれば、意思決定はスピーディーに進みます。しかし部分的な要望に応えすぎると、設備や環境に統一性がなくなり、オフィスの一括更新も難しくなります。長期的な視点に立ち、どこまでを全社共通のルールとするか。その基準を明確にすることは難易度の高い作業でした。
Naoki H.:そこで、Masayukiさんが持つファシリティマネジメントの専門性と、私が新卒からNECで培ってきた現場への理解や人的ネットワークを掛け合わせ、難局を乗り越えていきました。ネガティブな反応に対しても、「実はこうしたメリットがあり、他部門ではこのように活用されています」と、現場の視点に立って地道な対話と説得を重ねることで、相手の理解を得ることができました。
地道な対話を通じ、オフィスの全体最適を推進していった2人。部門間の物理的・心理的な壁を取り払うため、象徴的な仕掛けが施されました。
Masayuki O.:それは5階から12階までをつなぐ、合計すると200段以上の吹き抜け階段です。従来のオフィスはフロアごとに物理的に分断されていたため、部門間の行き来が少なくなる傾向がありました。健康増進も兼ねてこの階段を積極的に活用してもらい、組織の壁を取り払ってほしいと考えています。

階段という物理的な構造が促す共創の加速。Naokiは、自社をゼロ番目のクライアントとして社内DXを実践する「クライアントゼロ」としての取り組みを通じ、部門を超えた強固な連携をめざしています。
Naoki H.:世界中のスタートアップを含むパートナーと交わり、社会価値を創造していく。そのためにも単に人と人を「つなぐ」だけにとどまらず、課題に共に挑む仲間として互いの関係性を「固結び」していきたいと考えています。
NEC Innovation Parkは、「未来の働き方の実験場」です。「クライアントゼロ」としての取り組みを通じ、研究と事業開発の相乗効果を高める「知の創造の場」として、ここから新たな社会価値が生まれることを期待しています。
新拠点の完成はゴールではなくスタート。絶え間ないアップデートで育てる、共創の未来

全体最適の追求や、現場への理解浸透といった難局に立ち向かってきたNaokiとMasayuki。大規模プロジェクトへの挑戦は、キャリアの可能性を広げる機会になったと2人は振り返ります。
Naoki H.:NEC内でも有数の規模を誇るプロジェクトに携われたことは、非常に貴重な経験となりました。Masayukiさんと連携し、一つひとつの課題と向き合いながら乗り越えてきたプロセスは、私自身の大きな糧となっています。この経験を次のステージでも活かしていきたいと思います。
Masayuki O.:プロジェクトに参画した当初は不安もありましたが、Naokiさんとお互いの専門性を補完し合いながら課題に取り組んだからこそ、完遂できたと考えています。ファシリティマネジメントの枠を超え、組織を動かす難しさと醍醐味を肌で感じられたことは、私にとって何よりの財産です。
NaokiとMasayukiだけでなく、たくさんの関係者と共に完成させた今回のプロジェクト。部門やグループ会社の枠を超えた数多くの仲間への想いを、Naokiが代表して語ります。
Naoki H.:コーポレートデザイン統括部、デジタルID・働き方DX統括部に加え、構築現場を担ったNECファシリティーズやNECネッツエスアイ、運用面においては総務統括部、NECビジネスインテリジェンス、NECライベックス、NECフレンドリースタフなど、多くの関係者に支えられたおかげで、この拠点は完成しました。関わった一人ひとりがイノベーション創造の舞台をつくった仲間であり、その協力に心から感謝しています。
さまざまな関係者の想いが形となり、4月7日のグランドオープンを経て本格的な運用が始まったNEC Innovation Park。NaokiとMasayukiは、新拠点の完成をゴールではなくスタートラインと位置づけています。
Naoki H.:不動産や建物は、建てた瞬間から陳腐化が始まっていくものです。しかし、そこに導入した顔認証やデジタルツインといったテクノロジーは、日々アップデートしていくことができます。この拠点をNECグループ全体で活用し、事業の成長へとつなげていく取り組みは、まだ始まったばかりです。社員一人ひとりが誇りと愛着を持てる拠点をめざし、ここから次々とイノベーションが広がる場へと育てていきたいですね。
Masayuki O.:そのためにも、社会の潮流や働き方の変化に合わせて、運用面を絶えず更新し続ける必要があります。NEC Innovation Parkは設計段階から運用のしやすさを考慮していますが、使ってみて初めて見えてくる課題もあるはずです。オフィスを利用するユーザーがごく自然に働くことができる。そんな環境が私は理想的だと考えているので、一人ひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できるオフィスをめざし、今後も改善を重ねていきたいと思います。
常に未来を見つめ、多様な人材が活躍できる環境づくりに挑み続ける2人。これからイノベーションの創造を共に担うことになる未来の仲間へ、メッセージを送ります。
Masayuki O.:NECの働き方はここ数年で大きく変わり、個人やチームが目的に合わせて場所や時間を選択できるプロアクティブなスタイルが定着してきています。自分次第でさまざまな可能性にチャレンジでき、自律的にキャリアを築ける会社です。挑戦を求める方は、この変化し続ける環境にぜひ飛び込んでいただきたいと思います。
Naoki H.:私自身、SEから新規事業開発、そして今回のオフィス開発と、1つの会社にいながら多様な挑戦の機会に恵まれてきました。今度は私がそうした機会を間接的に提供できるよう、一人ひとりが活躍できる環境づくりに挑んでいきたいと思います。ここで働くことがキャリアの可能性を広げ、社会価値の創造につながっていく。そんな未来を、皆さんと共に描いていきたいです。
※ 記載内容は2026年3月時点のものです