グローバルでの持続的な競争力強化に向け、2024年度からジョブ型人材マネジメントを本格導入したNEC。それと並行し、戦略的ポジションを中心に総報酬の引き上げやグループ内人材公募制度の拡充など、多角的な改革を進めてきました。人への投資を重視した取り組みの狙いと現状の成果について、人材組織開発統括部のキーパーソン3人が語ります。
ジョブ型の導入で、「適時適所適材」の実現を。変化に対応できる人と組織をつくる

2018年に開始した「人・カルチャーの変革」の一環として、人事制度の改革を段階的に進めてきたNEC。2024年度からは全社員を対象に、ジョブ型人材マネジメントを本格導入しました。その狙いと背景について、人材組織開発統括部長の吉永 尚弘が説明します。
吉永:NECは典型的な伝統的日本企業であり、従業員数も非常に多い組織です。こうした企業に多く見られる特徴でもありますが、かつては内部公平性を重視し、どの職場でも同じ基準で評価・処遇する人事制度を運用することで、一体感や協調性を強化してきました。しかし事業環境が急速に変化する中で、このような画一的な制度運用に限界が見え始めます。変化に迅速に対応できる人材を、外部から獲得することも社内で配置することも難しくなったのです。
そこで、戦略起点で組織・ポジションを設計し、最適な人材を獲得・配置する「適時適所適材」の実現をめざし、NECはジョブ型人材マネジメントの導入に向けた改革を推進してきました。
ジョブの明確化により、社員は自身の強みと成長課題を把握し、望むキャリアを主体的に選択できます。同時に会社側も期待する役割や成果を可視化できるため、双方の期待値を擦り合わせることが可能です。こうして会社と社員が「選び・選ばれる」関係の構築をめざしていく。それがNECにおけるジョブ型人材マネジメントの狙いです。

2001年にNECへ新卒入社し、人事部門で長年キャリアを築いてきた吉永。制度改革の必要性を、採用の現場で実感していたと言います。
吉永:特にキャリア採用において、年々社外の有望な人材を惹きつけることが難しくなっているのを痛感していました。さらに社内で活躍している人材からも、市場価値と社内評価のギャップに対する不満の声が上がっていたのです。
人材獲得競争力を高め、労働市場から選ばれる企業になるためにも、改革を推進しなければならない。そうした想いを抱き、ジョブ型人材マネジメントの知見を持つ社外の専門人材も招き入れながら、改革を推進していきました。
その中で吉永が意識したのは、形式的な制度の導入に終わらせず、人と組織が絶えず成長し続けるプラットフォームをつくることでした。
吉永:“ジョブ”は人と組織の共通言語であり、その内容を明確化したジョブディスクリプション(職務記述書)は、採用や配置、評価の重要な基盤です。事業戦略に連動したジョブディスクリプションを作成するため、役員クラスのビジネスリーダーが委員長を務める職種別人材育成委員会が中心となり、内容を決定していきました。
もう1つ制度の導入にあたって重視したのが、社員とのコミュニケーションです。ジョブ型人材マネジメントの導入で何が変わるのか、キャリアにどういう影響があるのか。それを人事部門と社員、ピープルマネージャーとその部下など、さまざまな階層において話し合う機会を設け、時間をかけて理解の浸透を図りました。
こうしてジョブ型人材マネジメントの導入を進めてきたNECは、2024年度から新卒採用にもその考え方を拡大。内定時に配属部門と職種が確定する「職種×部門別採用」と、内定時に職種が確定する「部門フリー採用」から構成するジョブマッチング採用を導入しました。
吉永:自分の希望とは関係なく配属先が決まる、いわゆる「配属ガチャ」と呼ばれる不本意な配属に対する不安に応えたいと考えました。ジョブという共通言語を軸に、会社の期待役割と応募者のやりたい仕事を擦り合わせられるようになったのは、大きな変化だと感じています。公募制度とあわせて、入社時も入社後も自らキャリアを選択することができる環境を整えています。
市場競争力のある報酬制度へと改革。ジョブに対する成果に応じ、適切な評価を追求

ジョブ型人材マネジメントの考え方にもとづき、NECは報酬制度も改革。2025年度には約7%の賃上げを行い、大卒初任給だけでなく、若手層やシニア層の社員の報酬水準も引き上げました。報酬&福利厚生グループのディレクターである合田 陽子は、その目的をこう説明します。
合田:社内外の優秀な人材を獲得・維持するため、市場競争力を高めることが最大の目的でした。ポイントは、単なる水準の引き上げではなく、期待役割と成果に連動する報酬にしたことです。この報酬制度はNEC本体だけでなく、グループ会社約4.8万人に対しても展開しています。
年齢や属性に関わらず、成果に応じた報酬を実現すること。そのために重要となるのが適切な評価です。一連の改革では、社員の納得感を高めるため、評価プロセスも整備しました。
合田:社員のパフォーマンスやスキルの発揮度合いをもっともよく理解しているのは、現場のマネージャーです。そこで報酬決定の権限を現場のマネージャーにも付与しました。NECでは、複数のマネジメント層で評価を議論する「ラウンドテーブル」を実施することで、評価の納得性を高めています。
また、評価の対象は業績だけではありません。NECグループの行動基準である「Code of Values」の実践度も重視しています。この2つの軸で適切なフィードバックを行うことで、社員一人ひとりの成長を促すことを大切にしています。
人を最大の経営資源と位置付け、報酬や評価の改善を重ねてきたNEC。2025年度からは新たに、株式報酬制度「NEC Value Shares」も導入しました。
合田:まずは戦略的ポジションを担う約400人を対象に、月収と賞与に加えて株式報酬を付与し、総報酬の思い切った引き上げを実施しました。将来的には対象を6,000人以上に拡大する計画で準備を進めています。
企業価値の向上を自分事として捉えやすくなる「NEC Value Shares」。対象者向けのアンケート結果からも、その効果を実感していると合田は話します。
合田:対象者の約8割が、ポジティブな意識変化があったと回答しました。具体的には、「会社業績への貢献意欲が高まった」「NECへの愛着や帰属意識が高まった」「短期的だけでなく中長期的な事業成長を意識するようになった」といった声が届いています。
「NEC Value Shares」という名称に込められているのは、NECグループが大切にする共通の価値観を社員と共有し、 社員一丸となって中長期的な企業価値を高めていこうという想いです。この制度を起点にエンゲージメントをさらに高め、人と組織の成長につなげていきたいと思います。
通年型の公募制度をグループ7社に拡大。挑戦するカルチャーが、人材流動化を加速

報酬制度の改革と並行して、社員が自律的にキャリアを選び、最適なポジションに挑戦できる仕組みづくりも進めてきたNEC。ワークフォース&キャリアディベロップメントグループでディレクターを務める長谷川 充が、その取り組みについて説明します。
長谷川:事業環境の急速な変化に対応するには、「適時適所適材」が極めて重要です。その実現に向け、社員のキャリア自律を促し、自ら専門性を高めてジョブを選択することで、人材流動を加速するさまざまな取り組みを進めています。その1つとして特徴的なのが、通年公募型のキャリア・マッチング制度である「NEC Growth Careers(NGC)」です。
人事制度改革の一環として2019年に従来の社内公募を刷新したNGCを導入した背景には、会社と社員の関係を見直す強い決意がありました。従来のように、会社が社員を管理する関係から、社員が自ら望むポジションに挑戦できる機会を会社が最大限に提供することで、互いに「選び・選ばれる」関係へと変えていく。そのための制度として導入されました。
きっかけとなったのは、社内変革プロジェクトです。社員によるボトムアップの提案を経営層が真剣に受け止めたからこそ、実現した制度だと言えます。
社員の声が形になったNGC。組織は募集ポジションを常時公開し、社員は職務経歴書の登録を通じていつでも自ら新たなキャリア機会に挑戦できることが特徴です。NGC導入前は100人程度だった公募による異動は着実に増え、2024年度には412人にまで拡大。これは、NECのカルチャーが変わったことを示していると長谷川は話します。
長谷川:NGCを通じて新たな人材を獲得する組織があれば、当然送り出す組織があるわけです。以前のNECならそのことに対する現場の抵抗が強く、公募を拡大するというNGCの実現自体が難しかったと思います。しかし、会社も社員も本気で変革に取り組み、NECは挑戦するカルチャーに変わりました。その結果、NGCの利用者がこれほど増えたのだと考えています。
変化は現場の声からもわかります。NGCで社員を送り出したあるマネージャーは、“他の組織でも活躍できる優秀な人材を輩出できた”と胸を張ります。異動した社員が元の部署と協働して提案活動に取り組む事例もあります。人材の流動化が、組織の強化にもつながっていることがわかる好例だと思います。
こうして人と組織の成長に役立てられているNGC。2025年度からグループ7社間に拡大し、約4.8万人が利用するプラットフォームとして進化しています。
長谷川:会社単体ではなく、NECグループ全体で「適時適所適材」を実現することで、さらなる競争力強化につなげることが狙いです。より機動的に会社が人員配置を行う一方でこうした公募の仕組みが整うことで、社員にとっても、今まで以上にフェアでオープンな形で、キャリアの選択肢が大きく広がることになります。これだけの規模でキャリア機会を提供できるのは、NECグループならではの強みだと考えています。

ジョブ型を通じた変革にゴールはない。貫くのは「変わり続けることを、変えない」姿勢

ジョブ型人材マネジメントが本格導入されてから約1年半。変化の一端として、吉永はエンゲージメントの向上に言及します。
吉永:2018年度は18%だったエンゲージメントスコアは、2024年度には42%まで向上しました。これは長年取り組んできた変革の積み重ねであり、ジョブ型人材マネジメントの導入もその一因となっていると言えます。
社員一人ひとりのジョブが明確になったことで、自分の仕事が会社の成長にどう影響しているのかを意識しやすくなった。その結果、個々のパフォーマンスが高まり、好調な業績からも手応えが感じられ、エンゲージメントの向上につながるという、人と組織の間での好循環ができてきていると考えています。
合田:エンゲージメントの向上には、やりがいや成長実感に加えて報酬制度も重要です。市場競争力のある報酬制度は、社内にいる優秀な人材をリテンションするうえでも欠かせません。今回の賃上げや総報酬の思い切った引き上げは、そのための施策でもあります。
長谷川:報酬以外の領域でも、人事制度全体として優秀な人材に長く活躍してもらうための仕組みづくりは着実に進められています。先述のNGCによる開かれたキャリア機会の提供や、適切な評価とフィードバックもその1つです。これらを効果的に作用させることが、「選び・選ばれる」関係の構築につながっていくと考えています。
エンゲージメントの向上や人材のリテンションにも寄与しているジョブ型人材マネジメント。成果が表れ始めている中、吉永は今後の展望についてこう語ります。
吉永:ジョブ型の導入は手段であり、目的ではありません。社員一人ひとりの力を最大化し、グローバルで「勝てる組織」をつくり、企業価値を向上させる、すなわち社会に必要とされる会社に成長させていくことが目的です。ジョブ型の仕組みが整いつつある今こそ、このプラットフォームを事業戦略と一体で運用し、これまでとは次元の異なる組織変革を進めていく必要があります。
「勝てる組織」をつくるには、事業ポートフォリオの視点が欠かせません。今強い事業が将来も競争力を維持できるとは限らない。だからこそ、次の柱を並行して育てながら、各事業フェーズに応じて「適時適所適材」を実現することが重要です。そのために、ピープルマネージャーと連携しながら、HRビジネスパートナーが中心となり戦略的に支援していくことが求められます。
ジョブ型人材マネジメントを通じた変革にゴールはないと、吉永は続けます。
吉永:私たちがこの先も貫くべきなのは、「変わり続けることを、変えない」という姿勢です。事業環境の変化に合わせて、人も組織も絶えず変わり続けなければなりません。今よりもっと変化を起こしやすい環境を整え、変化を称賛できる文化を築いていきたいと思います。
グローバルで勝ち続ける企業をめざし、ジョブ型人材マネジメントの導入をはじめとする改革を推進してきた3人。最後に社員としての視点から、NECで働く魅力を語ります。
吉永:ジョブ型人材マネジメントの導入により、NECは大きく変わりました。ジョブが会社と社員の共通言語となり、互いに解像度の高いコミュニケーションができる環境があります。一人ひとりがやりたいことやスキルにマッチするジョブを選び、会社と共に成長できる。それがNECの魅力だと思います。
合田:歴史ある企業でありながら、挑戦を恐れず変化し続けることがNECの良さだと感じます。社員の成長を支援する制度が充実していて、専門性を磨くための学びの機会も豊富です。自分の意志でキャリアを選ぶことができ、そのために必要なサポートが手厚い会社だと思います。
長谷川:NECグループには約12万人もの社員が働いています。それだけ事業規模が大きく、皆さんにとってのキャリアの可能性になることが魅力です。多様なジョブの選択肢があるので、やりたいことが見つけやすい会社です。この環境を活かし、社会にインパクトを与える仕事ができることが、NECで働く醍醐味だと感じています。
※ 記載内容は2025年9月時点のものです