大学時代から知的財産法の研究に注力し、論文3本を執筆したShunsuke C.。コロナ流行の最中にNECに入社し、知財部で通信特許のライセンス交渉や米国特許訴訟対応などを担当し、現在は海外赴任者として米国で働くShunsuke C.が、知財業務の醍醐味を振り返ります。
大学での研究から知財の道へ~学びを活かせる企業との出会い
私が大学から大学院時代にかけて最も注力していたのは、特許法を中心とした研究活動でした。学業をメインに据え、大学時代には学内の論文集への投稿を目的とした論文を2本執筆し、大学院では更に視野を広げて海外の制度を調査し、日本の制度との比較分析を行いながら論文執筆に取り組みました。これらの研究を通じて、知的財産という分野の奥深さと面白さを実感していきました。
私の就職活動の軸は明確で、学生時代に学んだ知財や法律に関する知識を生かせる会社や部門で働きたい、そして先進的な技術に関われる仕事に就きたいというところでした。そのため、優れた技術力があることをアピールしている企業に特に興味を持って企業研究を進めていました。
NECについては、入社前からいわゆる電機系の伝統的な大企業でありながら、ICT技術を使って先進的なサービスを提供している会社という印象を持っていました。さらに、インターンシップを通じて、通信技術に関する特許権の活用を積極的に行っている会社であることも知ることができました。
最終的にNECへの入社を決めた理由は、まさに自分の就職活動の軸と合致していたからです。NECが優れた技術を有する会社であること、新卒で知財部員を募集していることから、技術力のある会社の知財部員として自分の理想とするキャリアを歩めるのではないかと考えました。また、インターンシップを通して実際に知財部のメンバーと接し、その雰囲気や業務内容に強い興味を抱いたことも決め手となりました。
コロナ流行の最中での入社から多様な経験を積んだキャリアの歩み

ちょうどコロナの流行が始まったタイミングでNECに入社することになりました。最初の1か月間は、オンラインでビジネスマナーやNECの歴史、経営方針や社員としての行動規範について学ぶ研修からスタートしました。その後、知財部に配属され、オンラインと対面をうまく使い分けながら実践的なOJT教育を受けることになりました。
知財部では、まず特許のライセンス交渉を担当するチームに配属されました。通信特許などのライセンス活動に従事する中で、新入社員ながらも世界的な企業とのライセンス交渉プロジェクトに参加する機会をいただきました。交渉の準備段階から最終的な合意に至るまで、一連のプロセスを経験することができ、最終的に交渉をうまく終えられた時の達成感は今でも印象に残っています。この経験を通じて、交渉の準備の重要性や交渉の進め方、そしてその難しさを肌で感じることができ、自分自身の大きな成長につながったと実感しています。
その後、訴訟チームに配属が変わり、主に米国での特許訴訟対応を行うようになりました。米国特許訴訟の会社に与える影響は非常に大きく、訴訟関連業務を行う中で自分の果たす役割の重要性やこれまでよりもよりグローバルに活動することの必要性を感じ、精力的に業務に取り組んでいました。また、ライセンス交渉とは異なる側面から知的財産に関わる業務を経験することで、それまでにはなかった新しい視点を身につけることができました。
入社前は、いわゆる日本の古き良き大企業というある種のお堅い雰囲気があるのかなと思っていました。しかし、実際に働いてみると、想像していたよりもはるかにオープンで多様性に富んでいて、色々なことに挑戦することに意欲的な環境であることに驚きました。このギャップは良い意味での発見であり、自分自身も積極的に様々なことにチャレンジできる土壌があると感じています。
米国での知財訴訟業務とグローバル環境での成長実感

現在は米国子会社のNEC Corporation America(NECAM)の法務部門に所属しています。Senior IP Specialistとしての役職を担いながら、訴訟やライセンス活動など知財権の活用による知財収益化事業を通じて、全社の利益貢献を目指すミッションに取り組んでいます。
日々の業務では、知財部が主導している米国特許訴訟やそれに伴うライセンス交渉に関する戦略立案が中心となります。それに加えて、子会社が対象となった知財関連の訴訟対応、警告状への対応、知財教育など、出願関連を除く知財業務を幅広く担当しています。訴訟を担当する米国弁護士事務所の一つにオフィスを構え、時差の影響を受けずにタイムリーな情報共有と相談・戦略策定を行うなど、米国側の窓口として弁護士との対面コミュニケーションを重視した業務スタイルを確立しています。
最も印象に残っている成功体験は、サポートしていた訴訟においてNECに有利な形で相手方と和解に至ったことです。弁護士とのやり取りや証言録取などの裁判上の手続き、そして交渉を通して相手に効果的に働きかけることで、こちらに有利な結果で終えることができました。この成果は私を含むチーム全体の日々の積み重ねが実った結果だと実感しており、大きなやりがいを感じています。
一方で、英語がネイティブレベルではないため、コミュニケーションや表現において日本語ほど適切に自分やチームとしての意見を伝えることには今も苦労しています。この課題に対しては、日本語以上に自分の言いたいことを明確化及び簡素化し、場合によっては伝えたいことを事前に書き出しておくなど、入念な事前準備を行うことで言語上の障害を減らすよう工夫を重ねています。
学生時代と比較すると、任せられた仕事に自分なりのアイディアや考え方を反映させながら責任を持ってやり遂げる力、そして学生時代では考えられないほど多様な人とコミュニケーションを取りながら仕事を進める力が大きく成長したと感じています。特に語学力を含むコミュニケーション力の向上は、現在の国際的な業務環境において不可欠な能力として日々磨かれ続けています。
現在携わっている訴訟関連の業務で培った知識や経験は、ライセンス交渉や契約業務など、知財の他の領域でも十分に活かすことができる貴重な財産だと感じています。だからこそ、短期的にはまだ深く関わっていない新しい領域の業務にも積極的にチャレンジして、自分の知見をさらに広げていきたいと考えています。
そうした経験の積み重ねを通じて、将来的には今よりもはるかに幅広い領域でプロジェクトをリードできるような立場に成長したいと思っています。知財の渉外業務を一気通貫で担えるようになることが、私の中長期的な目標です。そこまで到達できれば、活躍の幅も大きく広がり、より影響力のある仕事に携わることができるはずです。
知財のプロフェッショナルを目指されている皆さんへ

私たちの職場には、大きなプロジェクトに入社してすぐに関わることができたり、海外赴任や海外業務の立ち上げといった重要な業務を任せてもらえたりするなど若いうちから影響力の大きい仕事に挑戦でき、そのような挑戦を後押ししてくれる環境が整っています。また、米国出身の弁護士を複数人登用するなど、多様性に富んだ才能あふれる人々と日々交流できる刺激的な環境でもあります。自分の能力や視座を常に高めていきたいと考える方にとって、非常に恵まれた環境であると思います。
こうした多様な人材が集まる環境で活躍するためには、自分なりの考え方を説得力を持って伝えられることが重要だと感じています。同時に、相手の意見にしっかりと耳を傾け、建設的な対話を重ねることができる姿勢も欠かせません。そして何より、技術的な領域に関わることが多いこの分野では、新しいことに対して常に興味と関心を持ち続け、学び続ける姿勢がある人であれば日々の業務に前向きに取り組めると思います。
知財や法律に関する仕事に興味があり、技術的な知識を学ぶことを楽しめる方には、ぜひ私たちの仲間になっていただきたいです。また、活躍の場を日本だけに限定せず、広く様々な人とのコミュニケーションを積極的に取ることができる方であれば、きっとこの環境で力を発揮していただけるものと思います。
※記載内容は2025年12月時点のものです