NECスペーステクノロジー株式会社の部品技術部で部品プログラム業務を担当するYuki O.。「宇宙の解明以上にスケールが大きいものはない」と語るYuki O.が、大学研究からJAXA出向まで、宇宙開発への道のりを振り返ります。
宇宙への憧れと大学研究が導いたNECへの道のり
大学時代を振り返ると、もっと研究に注力しておけばよかったと感じています。実際に入社後、新規開発製品のコア技術が自分の研究分野と重なることがあり、大学での研究がこれほど直接的に役立つとは思いませんでした。たとえ直接的な知識が活用されなくても、実験やシミュレーションで試行錯誤を重ねた経験は、開発業務において確実に活きていると実感しています。
就職活動では電機業界のエンジニア職を軸に企業を探していました。その中でも、せっかく働くなら大規模なプロジェクトに携わりたいという思いが強く、自然と宇宙開発関連企業に目が向きました。元々宇宙が好きだったこともあり、好きな分野でモチベーション高く仕事ができる方が自分にとって良いだろうと考えていました。
NECについては、入社前は歴史のある企業というイメージが強く、特にPCのイメージが印象的でした。学校で使っていたPCもNECでしたし、「バザールでござーる」のCMも記憶に残っていました。しかし、調べていくうちに宇宙開発分野での実績を知り、イメージが大きく変わりました。
最終的にNECへの入社を決めた理由は明確でした。国内で大型人工衛星を手掛ける企業の中で、はやぶさなどの科学衛星や探査機で実績があるのがNECだったのです。大きなプロジェクトに携わりたいと考えていましたが、宇宙の解明以上にスケールが大きいものはないと思います。また、立地の良さも決め手の一つでした。こうして、研究への取り組みと宇宙への憧れが、私をNECへと導いてくれました。
研修から始まり、宇宙業界での多様な経験を積んだ入社後の歩み
入社後は段階的に設計された研修プログラムが待っていました。まず全社研修では、社会人としての基本的なルール・マナーを学び、グループワークを通じて同期との絆を深めました。続いてBU研修では、私たちが携わる顧客について詳しく学習する機会がありました。特に印象的だったのは自衛隊基地の見学で、実際の現場を目の当たりにすることで、自分たちの仕事がどのような場面で活用されているのかを肌で感じることができました。職種に応じた研修では、業務の基礎となるハードウェアやソフトウェアの知識、そして製品知識を体系的に学びました。
入社後の配属先はNECスペーステクノロジー株式会社となり、部品技術部で海外衛星メーカー向け機器の部品プログラム業務をメインに担当することになりました。宇宙という特殊な環境で使用される部品は、地上で使われるものとは全く異なる厳格な基準が求められ、毎日が新しい学びの連続でした。
実際に働き始めてから感じたギャップもありました。ロケット打上げの際には、みんなで手に汗握りながら見守るものだと思っていたのですが、実際には特に触れることもなく普通に業務を続けていて、少し拍子抜けしたのを覚えています。ただ、それも昔の話で、今では社内でビューイング企画が開催されるなど、打上げを皆で応援する文化も根付いています。また、堅いイメージを持っていた職場でしたが、スーツや作業服ではなく割と自由な服装で働けますし、職場の雰囲気も思っていたより賑やかで親しみやすい環境でした。
入社3年目の途中、大きな転機が訪れました。JAXAへの出向が決まったのです。安全・信頼性推進部で約3年弱という期間、JAXA認定部品の審査・運用や新規部品の評価業務に携わることになりました。日本の宇宙開発の中枢で働く経験は、技術的な知識だけでなく、宇宙開発に対する責任感や使命感を大きく育ててくれました。
宙への責任と膨大な部品管理の中で培った成長
現在、私はNECスペーステクノロジー株式会社の部品技術部で部品プログラムという仕事を担当しています。プログラムといってもコンピュータのプログラミングではなく、計画や取り仕切りという意味です。人工衛星やロケット等に搭載する宇宙用機器に使う電気部品の専門家として、厳しい宇宙環境で何年も壊れずに動く部品の選定から管理まで、すべてをプログラムしています。
宇宙という特殊な環境では、一度打ち上げてしまえば修理は不可能です。そのため、部品レベルで極めて高い品質と信頼性が求められます。プロジェクトによって要求も異なるため、適切な部品を選定し、顧客に対してその部品が要求に適合していることを説明するのが私の役割です。私はその中でもロケットや科学衛星プロジェクトを担当しています。
印象に残っている出来事として、H3ロケット2号機の打ち上げ成功があります。初号機の失敗を受けて、当社機器に問題がないか改めて見直しや調査を行っていたので、無事に打ち上がったときは本当にほっとしました。顧客からの感謝状や社内表彰をいただくこともあり、チームでの成果を実感できる瞬間です。
一方で、衛星を丸ごと開発すると部品点数は膨大な数になるため、ハンドリングには常に苦労しています。試験が不足している部品があることが判明したり、使用予定なのにリストに載っていない部品があったりと、様々な問題が発生します。スケジュール遅延等の影響が大きくならないよう、常に細心の注意を払って管理する必要があります。
学生時代と比べて最も成長したのは、意見の発信力です。プロジェクトチームには様々な立場の人がいて、予算管理をする人はコスト削減を、生産管理をする人は納期短縮を重視します。私は部品の品質・信頼性を確保する立場として、対立ではなく解決というマインドを持ちながら、必要な意見を発信していく力を鍛えられました。
コンステレーション衛星への挑戦とゼネラリスト・スペシャリストへの道
現在、私が最も力を注いでいるのは、コンステレーション衛星向けの部品プログラムへの挑戦です。宇宙業界では今、このコンステレーション衛星がトレンドになっています。従来の宇宙開発では、一機一機を完璧に作り上げることが当たり前でしたが、コンステレーション衛星は全く異なる発想です。多少壊れてもよいので数百機を打ち上げてしまおうという、今までにない考え方の衛星なのです。
この新しいアプローチでは、部品についても従来の「宇宙用を使う」という固定概念から脱却する必要があります。それは私にとって新たな挑戦であり、同時に大きなやりがいでもあります。宇宙分野は今後も拡大し続け、今までにないモノがどんどん出てくると確信しています。だからこそ、私はあらゆるプロジェクトに対応し、挑戦できるゼネラリストかつスペシャリストを目指したいと考えています。
宇宙の開発は量産品ではなく、一点もの新規開発が多い分野です。当然、上手くいかないこともあります。そんな時に、一緒になって課題解決やブレイクスルーを図ってくれる人に、ぜひジョインしてほしいと思っています。宇宙や部品の知識がなくても心配はいりません。むしろ、既存の枠組みに縛られない自由な発想ができることが、この業界では大きな強みになるのです。
私たちが求めているのは、積極的に知識を吸収できる人、先読みして行動できる人、そして主体的なコミュニケーションを取れる人です。部品は新しいものがどんどん出てくる終わりのない領域であり、採用を誤ると後戻りが大きく、影響も全機器に及ぶ可能性があります。また、あらゆる部署や顧客、メーカーと接する業務なので、コミュニケーション力は欠かせません。この業界で働く醍醐味は、まさに人類の未来を切り拓く最前線に立てることだと思います。
※記載内容は2025年12月時点のものです

