社員一人ひとりの挑戦と成長を支えるため、NECが推進しているキャリア自律。その実現において重要なのは、希望するキャリアに必要な学びを自ら得ることです。学習環境や人事制度の整備を通じ、キャリア自律を支援する人材組織開発統括部の小野田 千紗とL&D統括部の村上 大輔が、取り組みの現在地を語ります。
グローバルで勝ち続けるために。キャリア自律を通じ、変化に強い人と組織をつくる。

社員が主体的にキャリアを考え、選び、そのために必要な学びを自ら得る「キャリア自律」。NECがこの取り組みを重視する背景には、2024年度から本格導入されたジョブ型人材マネジメントがあると小野田は話します。
小野田:ジョブ型人材マネジメントは、目的を達成するための“手段” として導入されました。目的とは、事業環境の変化にスピーディーに対応し、グローバルで勝ち続ける企業になることです。そのために会社側は、戦略起点で組織の設計やジョブの明確化に取り組み、最適な人材を配置して「適時適所適材」の実現をめざしています。
そのなかで社員は、主体的にキャリアを選択し、それぞれのジョブで求められる専門性を磨く必要があります。こうして戦略と紐づいたジョブを通じ、会社と社員が「選び・選ばれる関係」を構築していく。それがジョブ型人材マネジメントの全体像です。
社員一人ひとりが変化に柔軟に対応し、自らの意思で変わり続けなければ、社会価値を創造するという我々のパーパスは実現できません。個々の力を組織の力として結集し、事業成長を加速させるためにも、キャリア自律が重要になるのです。

小野田:異動や昇格など、職種や役割を変えることがキャリア自律だと思う方もいるかもしれません。そうではなく、社員一人ひとりが自ら仕事で提供できる価値の拡大をめざし、成長に向けて学び続けることでキャリアを切り開いていく。それがキャリア自律の考え方です。キャリア自律には自ら学ぶ姿勢が欠かせないと、会社として改めて伝えていかなければならないと考えています。
キャリア自律に対する理解を促すため、社内イベントの実施や情報発信の強化に取り組んでいる小野田と村上。村上が施策を通じて伝えたい想いを語ります。
村上:キャリア自律の本質は、自分の人生を見つめ直し、自らがより良い生き方を選び取っていくことにあると考えています。事業環境の変化に伴い会社の戦略も変化していく中で、自分がどうすればより幸せに生きられるのか。それを実現していくために、、学びを続けていくことが大切です。
学びは、自分を成長させる手段の1つですので、さまざまな学び方がある中で自分に最適なものを選択し、一人ひとりが思い描く人生やキャリアを実現してほしいと思います。
キャリア自律の一歩は、主体的な学びから。経験・他者・研修を通じた成長のアプローチ。

社員のキャリア自律を推進するため、NECでは学習に対する考え方をラーニングフィロソフィーとして体系化しています。その中で村上が改めて強調するのが、主体的な学びの重要性です。
村上:ラーニングフィロソフィーで最初に掲げているのは、「始めよう、主体的な学び」というメッセージです。ジョブ型人材マネジメントの環境下においては、社員一人ひとりが自ら学びを進める姿勢が欠かせません。従来のように、会社が用意してくれた研修で学ぶという受け身の姿勢から、転換を図る必要があります。
そして主体的な学びに加え、NECでは現場での学びも重視しています。最先端の知見が集まっているNECだからこそ、実務から学びを得ることが大切です。現場で挑戦し、課題や成果を振り返りながら改善を重ねていくことが求められます。
その積み重ねによってプロフェッショナルとしての市場価値を高め、社員と会社がお互いに「選び・選ばれる関係」を構築していく。それがNECにおける学びのアプローチです。

そしてNECでは「経験から学ぶ」「他者から学ぶ」「研修(公式学習)から学ぶ」と学びの場を3つに整理し、それら3つすべてを主体的に活用することを促しています。
村上:人材育成でよく引用される「ロミンガーの法則」によると、人の成長に及ぼす影響度合いは「経験」が70%、「他者」が20%、「研修」は10%と言われています。その法則にもとづき、まず「経験から学ぶ」には、どのような実務に挑戦してそこから何を得るのかを考え、経験後に振り返りを行うことが重要です。そして、周囲にフィードバックをもらうなど、「他者から学ぶ」ことも欠かせません。
さらに、社内外のトレーニングプログラムを活用するといった「研修(公式学習)から学ぶ」ことも大切です。NECではこれら3つの学びの場すべてを主体的に活用できるよう、さまざまな支援を行っています。

具体的な学習支援の1つとして、NECでは年1回のスキルアセスメントを中心とした仕組みを整備しています。
村上:スキルアセスメントの目的は、現在のジョブで不足しているスキルや、将来のキャリアに必要なスキルを明確化することです。その結果をもとに、先述の「経験」「他者」「研修」で何を学ぶかを検討し、キャリア開発計画を立てます。
そして、今後のキャリアについて上司と考えるキャリアレビューの実施に加え、定期的な1on1を通じて進捗を確認します。こうして学びのサイクルを継続的に回す仕組みを整備することで、社員一人ひとりの成長を支えています。
社内公募制度で広がるキャリアの選択肢。グループを越えて加速する、人材の流動化。

NECのキャリア自律を支える重要な施策の1つが、2019年度にスタートした通年公募型のキャリア・マッチング制度「NEC Growth Careers(NGC)」です。この制度は、社員によるボトムアップの提案で実現しました。
小野田:以前から社内公募制度は整備されていたのですが、年に2回しか募集がなく、公開されるポジションも限られていたため、活用しきれていませんでした。その状況を変えるきっかけとなったのが、2018年度に始まった人とカルチャーの変革です。
社員一人ひとりの力を最大限に引き出すことをめざし、人事制度、働き方、コミュニケーションの改革を推進。その一環として、社員の提案により社内公募制度が刷新されました。
こうして導入されたNGCには、従来の公募制度とは異なる2つの特徴があります。
小野田:1つめは、社員が自身の職務経歴書を社内で公開できる点です。ポジションを募集している組織は募集求人を掲載してただ応募を待つのではなく、社員の職務経歴書を閲覧し、適任者がいればオファーを送ることもできます。
2つめの特徴は、AIを活用した適所・適材レコメンド機能です。社員の職務経歴書と募集ポジションをマッチングさせることで、社員に募集求人を薦める「適所推薦」と、募集求人に社員を薦める「適材推薦」を実現します。これにより、社員は専門外のキャリアの可能性にも気づき、選択肢を広げることができます。
NGCの活用を促し、キャリアの選択肢をさらに広げるべく、2024年度からはグループ会社間での公募も開始しました。
小野田:現在は主要なグループ会社からNGCの導入を始めていますが、将来的にはさらに導入社数を増やし、NECグループ全体で「適時適所適材」を実現していく方針です。2024年度のグループ間におけるNGCによる異動者数は410人と、着実に人材の流動化が進んでいるので、この動きをさらに加速させていきたいと思います。

新たなキャリアに挑戦する機会の提供を通じ、社員のキャリア自律を支えるNGC。こうした人事制度に加え、NECライフキャリアによる専門的な支援も行われています。
小野田:NECライフキャリアは、個人の主体的なキャリア形成を支援し、人材の流動化や「適時適所適材」を実現するための専門組織として、2020年に設立されました。キャリアプログラムの企画・運営やリスキリングの支援を行うなど、社員と組織の双方をサポートする質の高いプログラムを提供していることが特徴です。
プログラムの一例として、社員の年代に応じたキャリア形成を支援する「Career Design Workshop(CDW)」があります。
小野田:このワークショップでは、年代別に直面しやすいキャリアの課題について考え、行動する力を養います。まずアセスメントを通じて自身の強みや成長課題を把握し、ワークショップに参加して、そこで得た気づきをもとにキャリアプランを設計します。さらにキャリアアドバイザーとの個別面談を実施し、プランの実行性を高めることで、行動変容を促すサイクルを回していきます。
このように単に研修を受けて終わりではなく、実効性の高い支援を行っていることがポイントです。また、社員はいつでもキャリアアドバイザーとの面談を申し込めるため、必要なタイミングで専門的なサポートを受けることが可能です。ほかにもリテラシーと同時にコンピテンシーを開発する行動変容プログラムを提供するなど、幅広い支援を行っています。
多様な活躍の場があり、挑戦の機会がある。NECだから実現できる社会貢献と自己成長。

ジョブ型人材マネジメントの導入から約1年半。NEC従業員2.2万人のうち、4分の1にあたる約5,000人(※)の流動が実現しました。ここからさらに「適時適所適材」を加速させていく必要があると、小野田は話します。
小野田:現状は社員の手挙げによる流動よりも、会社主導の流動が割合としてはまだ多いと感じています。キャリア形成や学びの機会は、会社から与えられるものではなく自ら得るものです。自身のキャリアのためにどういうスキルや知識が必要かを考え、新たなチャレンジ・主体的な学びに取り組む社員がもっと増えてほしいと考えています。
そのために私たちは、学びや挑戦の機会を今後も全力で提供していきます。目の前にある機会を、自分が描くキャリアの実現に向けて最大限に活用してもらいたいです。
NGCやNECライフキャリアによる支援など、整備が進められている学習環境。それをどう活かすかが、今後の重要なテーマだと村上は語ります。
村上:サーベイの結果からも、NECの学習環境を評価している社員が多いことがわかります。一方で、それを自身のキャリア形成とうまく結びつけられていないことが現状の課題です。その課題を解決する鍵は、上司とのコミュニケーションにあると考えています。
なぜならスキルアセスメントやキャリア開発計画は、すべて上司との対話を通じて進められるからです。上司であるピープルマネージャーのコミュニケーションをサポートする取り組みにも、一層力を入れていきたいと思います。
役職や年齢に関わらず、自ら学ぶ姿勢が求められるキャリア自律。ただ学ぶのではなく、何のために学ぶのかを問い直すことも重要だと村上は続けます。
村上:学習すること自体を目的化しないことが大切です。自分が希望するキャリアを実現するために、学習というツールを活用してほしいと思います。
社員のキャリア自律を支援しながら、自らも一人の社員としてキャリア自律を実践してきた村上と小野田。それぞれの歩みを通じて感じた、働く場としてのNECの魅力をこう語ります。
村上:キャリア入社して実感したのは、 社歴や役職に関わらず、社員の挑戦を受け入れる文化が根付いているということです。自分が新たに挑戦したいことを提案すると、それを後押ししてくれる環境があります。
実際に私が担当している業務の多くは、自ら提案して採用されたものです。自分がやりたいことが明確にあり強い意志を持っている方なら、活躍できる会社だと思います。
小野田:NECグループは事業領域が幅広いため、多様な活躍の場があります。そして最新のテクノロジーを活用し、さまざまなパートナーと共創する中で、社会価値の創造と自己成長の両方を追求できることが魅力です。
これは技術者に限らず、私のようなコーポレート部門の職種も同じです。新卒入社して約20年経ちますが、テクノロジーを通じて社会に貢献できる会社で働けることに、誇りを感じています。技術で社会をより良くしたいという想いがある方なら、職種を問わず自分らしく誇りを持って働ける会社だと思います。
※ 記載内容は2025年8月時点のものです