NEC Orchestrating a brighter world
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NECのAI技術で創薬に挑む。グローバルな協業で、がんと感染症に新たな治療法を

パイト アイヴィグレイス

パイト アイヴィグレイス

2021年にキャリア入社したパイト アイヴィ グレイス。AI創薬統括部で、プロジェクトマネジメントを中心に幅広い業務を担当しています。国内外のパートナー企業や製薬会社との協業、新しい子会社の設立など、さまざまなプロジェクトを推進し、グローバルに活躍するアイヴィが、仲間と共に創薬に挑む想いを語ります。

海外のメンバーを統括し、プロジェクトを推進。オープンマインドと適応力を大切に

私はグローバルイノベーションビジネスユニットのAI創薬統括部に所属しています。AI創薬統括部のミッションは、がんや感染症に苦しむ患者さんのQOLを向上することです。日本電気株式会社(以下、NEC)が開発した最先端のAI技術を活用し、患者さん一人ひとりに最適な治療法の提供をめざして創薬に取り組んでいます。

その中で私が任されているのは、ビジネス・ディベロップメント・マネージャーとしての役割です。プロジェクトマネジメントを中心に、新たな市場の探索やビジネス戦略の策定などを行っています。案件によっても異なりますが、プロジェクトメンバーは最大30名程度です。ドイツ、ノルウェー、アメリカなど、海外拠点のメンバーをサポートしながら、計画通りにプロジェクトが進行するよう管理しています。

グローバルなプロジェクトでは、仕事の進め方や価値観の違いからさまざまな課題が生じます。とくに、メンバー全員の足並みをそろえることは容易ではなく、チームが各国に分散している場合、コミュニケーションは一段と難しくなります。そこで私は、自ら積極的にコミュニケーションを取り、先入観を持たずに一人ひとりの事情を理解し個性を尊重することで、意思疎通を図り、チームがパフォーマンスを最大限に発揮できるようリードしています。

国を超えた大規模なプロジェクトを管理するには、適応力も重要です。予期せぬ課題の発生や状況の変化に対応するためにも、常に柔軟であることを大切にしています。メンバーを支えるだけでなく、私自身も優秀なメンバーに多くのことを学びながら、チーム一体となって難易度の高い創薬に挑戦しています。

創薬におけるNECの強みは、独自に開発した世界最高水準のネオアンチゲン予測システムをはじめとする、最先端のAI技術です。患者さんやウイルスのゲノムを解析し、そのデータに基づいて最適なワクチンの設計図を作成しています。

設計図をもとに新たな医薬品を開発し、ビジネスとして成長させるためにも、同じビジョンを持つパートナーが欠かせません。製薬会社や研究機関、さらに政府と連携を取りながら、安全・安心で効果的な医薬品の実現をめざしています。

科学の最前線で創薬に挑むために。多様な人と関わりグローバルに働けるNECへ入社

私は大学で化学工学を専攻し、その後フィリピンにある大学の研究機関に就職しました。そこでバイオ燃料を開発するプロジェクトの研究助手を務めたのがファーストキャリアです。

有用な化合物を生み出す微生物の力に興味を持った私は、さらに研究を深めるため日本の大学で修士号と博士号を取得しました。それまでずっと、アカデミックな世界に身を置いてきましたが、2018年に民間の企業で働くことを決意します。理由は研究に1人で没頭するより、多様な仲間と共に新たな挑戦がしたいという想いが強くなったからです。そこで食品用原料と機能性素材の製造販売を手がける大手食品メーカーに入社しました。

最初の約1年は新たなたんぱく原料の基礎研究などを行い、その後は国際営業を担当。初めてビジネスの世界に身を置いたことで、研究開発の成果を事業化し、社会へと還元することがいかに重要であるかを学びました。競合他社を知り、自社の強み・弱みを分析した上でどの市場にアプローチするのか。そうした事業開発に必要な知見を習得できたことは、私の大きな成長につながりました。

そこで2年の経験を積んだ後、私がNECに転職したのは、世界でも最先端のAI技術を使った創薬に大きな魅力を感じたからです。私は人々の命と健康を守る仕事がしたいと考え、食を通じてそれが実現できる食品メーカーに入社しました。しかし心の奥底には、医療の進歩に貢献したいという想いがありました。私の家族や友人など、大切な人ががんで苦しむのを目の当たりにしてきた経験から、少しでもそうした人々の力になるために、いつか創薬に携わることが私の願いだったのです。

NECのAI創薬統括部は、免疫療法という新しい分野において、世界でも数社しか実現できていない高度なAI技術を保有しています。自身の経歴を活かし、科学の最前線で世界的な影響力を持つ仕事に携われること、また英語を使いグローバルに活躍できる環境があること。そうした点にも強く惹かれ、NECへの入社を決めました。

入社して印象的だったのは、日本企業ならではの古い慣習にとらわれずに仕事ができることです。自分の能力を存分に発揮できる環境で働くことができ、とても恵まれていると感じます。担当するプロジェクトの規模も業務範囲も前職より広くなりました。NECならではの技術力や優れた人材、グローバルなネットワークなどを活かし、新たな経験を積むことができて満足しています。

初めての業務に次々と挑戦。信頼できるメンバーに支えられ、マイルストーンを達成

NECで担当した仕事の中でとくにチャレンジングだったのは、海外のパートナー企業とのワクチン開発において、臨床試験のフェーズ1試験からフェーズ2試験へ進めることでした。フェーズ1の試験では、ワクチンが患者にとって安全であり、有効性の兆候が見られたため、有効性を確認するフェーズ2試験に進むことが決定しました。しかし、これにはパートナー企業との契約や追加資金の調達など、さまざまな準備が必要です。

契約業務を担うのは初めてだったので、社内の法務担当に相談して進めていきました。両社の異なる意見を集約することに苦労しながらも、契約は無事締結。しかしその他にも、開発に必要な追加投資を経営陣に承認してもらうための準備や、試験に使用するソフトウェアのアップデートなど、多くのタスクを完了させる必要がありました。

私は自分でマイルストーンを決め、会議の設定やタスクの割り振りなど、全体の進行を管理しました。そして都度発生する課題に対しては、コンティンジェンシープランを提案することで、遅延なく進行できました。

それは決して私の力だけでなく、NECにいるさまざまな分野のエキスパートに支えられたおかげです。私は長く研究に従事していたので、専門領域が深く狭い分、ビジネスに関して知らないことがまだまだあります。そのため自ら知識を学ぶとともに、NECにいる優秀なメンバーに助けてもらうことで、新しい領域に積極的に挑戦できています。

海外新会社の設立もその一つです。昨年3月、オランダにNEC Bio B.V.を、ドイツにNEC Bio Therapeuticsを設立しました。何も知識がないところからのスタートでしたが、私には信頼できるメンバーがいます。まず各分野に精通したメンバーを集め、意見を求めました。

どの国に設立すれば、NECのリソースやネットワークを最大限に活かすことができ、将来的に市場にアプローチしやすいか──分析を重ねて事業計画を作成し、予算を獲得。そうして新会社設立のプロジェクトも無事に遂行できました。

また、日本企業で初めて「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」とパートナーシップを結び、最大480万ドルの資金拠出契約を締結できたことも印象深い経験です。NECでの新たな挑戦を通じ、チームで力を合わせれば高い目標もクリアできることを学びました。

チームであらゆる困難を乗り越えてマイルストーンを達成すること。それが私にとって一番のやりがいです。そしてメンバーが協力的かつオープンに仕事に取り組んでいる姿を見ると、自分の役割を果たせていると実感します。

困難で正解のない世界でも、信じた道を仲間と共に歩み続ける

創薬は十年を超える時間が掛かり、そのほとんどが失敗に終わるという厳しい世界です。どの道を選択し、どう進むべきか──そこに正解はありません。万一のリスクも想定しながら、あらゆる選択肢を検討する必要があります。

難しい判断を迫られるからこそ、自分が選んだ道を正解にするために前進し続けること。それが大切だという上司の教えを心に留め、自分の決断を信じて今後も個別化がんワクチンの開発に挑戦し続けたいと思います。

NECがここから次の開発フェーズへと進むためには、パートナーとなる製薬会社を探し出し、ワクチンの製品化に向けた協力関係を築く必要があります。これまでは周囲に頼りながら目的を達成してきましたが、今後は自分でアイデアを出し、製薬会社との関係構築に貢献することが目標です。今まで以上にマネジメントスキルやリーダーシップを高め、自分1人でも対応できる領域を広げていきたいと考えています。

まだまだ乗り越えなければならない課題が多いですが、私はNECなら創薬を実現できると信じています。個別化がんワクチンについては、臨床試験の初期のデータから有望な結果が学会で発表されてきており、現在進行中の臨床試験の進展を楽しみにしています。また、個別化がんワクチンの開発で培った知見を活かして、感染症ワクチンの開発も着実に進んでいます。どちらも将来の見通しはとてもエキサイティングだと私は思っています。

NECでキャリア入社して4年目を迎えましたが、私にとってこの転職は大きな成功でした。夢だった創薬の分野で新しい領域に挑戦でき、スキルアップのための研修も充実しているなど、成長し続けられる環境に満足しています。

イノベーションの最前線に立つグローバル企業で、海外のチームと共に働けることはとても刺激的な経験です。困難も多いですが、それを共に乗り越え、喜びをわかり合えるすばらしい仲間がいます。創薬の実現に向け、粘り強く挑戦し続ける情熱と、自分と仲間を信じて突き進む決断力を備えている。そんな方と共に、新たなチャレンジを通じて社会に貢献できるのを楽しみにしています。

※ 記載内容は2024年10月時点のものです

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