通訳という役割を超えて、
自分自身がシステムを開発する側へ。
中国で生まれ、6歳で日本へ移住。気がつけば日本語がいちばん得意になっていました。でも日本だけじゃもったいない。もっと世界を見たいと、アメリカの大学への進学を決意しました。専攻は国際関係学。各国の政治経済の関係などを学ぶことにしました。アメリカは思った以上に文化や価値観の違う国でした。とにかく自由で、多様性が尊重される。アジアの外に出て初めて、日本がモノカルチャーの国だと気づかされました。言葉の壁にもがきながら、異文化を理解し受け入れる。自由の国のカルチャーにどっぷりつかれた日々は、教科書には載っていない学びがありました。
学位を取得したあとは、日本へ一旦帰国。しかし日本では就職シーズンは終わっていたので、まず自分の強みが活かせる仕事を探しました。中国語、韓国語、日本語、英語が話せるスキルを活かし、通訳スタッフとして派遣登録しました。その時派遣された会社がNECでした。ジョインしたのはスポーツ世界大会のパブリックセーフティ分野のシステム開発プロジェクト。技術やシステムの知識はありません。表面的な通訳・翻訳しかできず、もどかしい思いをすることもありました。
通訳をするうち「もっと自分の意見を伝えたい」「自分の提案をしたい」という思いが芽生えてきました。通訳ではなく、開発でこの仕事に関わりたい。そう思うようになるまでに時間はかかりませんでした。そこで、思い切ってNECのキャリア採用枠に応募。採用が決まり、入社したのは2020年のこと。晴れてSEとして、スポーツ世界大会の入退場システム開発プロジェクトにジョインすることになりました。
自分が携わったシステムが、
スポーツ世界大会を支えるよろこび。
新型コロナウイルス感染症の拡大という、前代未聞の状況の中で行われたスポーツ世界大会。選手や関係者、報道関係を含め世界各国から約30万人以上が訪れると言われていました。私が携わっていたのは、数十万人を超える関係者が使用する、顔認証による本人確認システムの開発です。実は、これまでの大会の歴史の中で、顔認証による本人確認が行われるのは史上初。NECにとっても大きなチャレンジでした。
これまでは、人間の目による本人確認を行っていました。時間がかかることで行列が発生することはもちろん、なりすましのリスクもありました。私たちの使命は、いかに早く正確に本人であることを確認し、大会の安全・安心に貢献すること。それを支えるのが、世界一(※)の評価を獲得しているNECの顔認証技術です。精度・スピードともに世界最高水準を誇ります。
大会で使用される会場は全部で約40箇所以上。そのすべてに顔認証システムを、問題なく設置する必要がありました。お客さまと現地に設置をしてくれるパートナー等、様々なステークホルダと考えながら、行動し、プロジェクトマネジメントを遂行することが私の役割です。現場の課題を漏れなくヒアリングする。その課題を解決するために、お客さまに最適な解とオプションを含め提案する。スポーツ世界大会のパブリックセーフティは、私たちのシステムにかかっていると言っても過言ではありません。正直、プレッシャーを感じることもありました。でも、ボランティアに参加していた友人が「会場の本人確認システム、めっちゃ速い!」と感想を教えてくれたときは、疲れが吹き飛ぶくらいにうれしかったですね。
※米国国立標準技術研究所主催のベンチマークテスト結果
新しいパブリックセーフティと
新しい社会価値を創造したい。
スポーツ世界大会のような世界的なイベントで、パブリックセーフティを実現し、新しい社会価値を創造する。そんなことを実現できる企業は、広い世界の中でもNECだけではないかと思います。だからこそ、私たちには、テクノロジーで社会を変えていく使命があると思っています。
例えば、空港のセキュリティ。すでに、国内外でNECの顔認証を活用したシステムが導入されています。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大する中では、顔認証による本人確認をするだけではなく、マスク着用や体温など、これまでにない「ニューノーマル」な確認が必要になると思っています。とはいえ、NECも大企業ですから、いろんな部署にいろんな技術が点在している状況です。それを自分が集約して、世界の状況にあった最適なシステムをつくり上げたい。そして、世界のパブリックセーフティをアップデートすることが私の目標です。
プロダクトやサービスだけでなく、NECのカルチャーも変えていきたいですね。これまでは、同じ文化圏の人ばかりの組織でした。例えば、暗黙のルールや阿吽の呼吸など、モノカルチャー的な側面が強かったと思います。そういった既成概念を捨て、もっともっと多様性のある会社にしていきたい。みんなが新しい挑戦をしやすくするためにも絶対に必要な条件だと思っています。