ベンチャー企業からNECへ。
AI技術を活用し、がんの個別化治療に取り組む。
大学では薬学部の創薬科学科に所属しており、薬学の基礎を広く学びながら創薬のプロセスなども勉強していました。もともと薬の研究に興味があったので、大学院では記憶と薬をテーマにした研究に取り組みました。内容としては、記憶に関わる遺伝子に薬で働きかけ、記憶を押さえ込む仕組みを調べるというもの。この研究に携わったことがきっかけとなり、仕事でも研究に関わる仕事に就きたいという想いが芽生えました。
新卒で入社したのはバイオインフォマティクスという遺伝子が持つ情報の解析を手掛けるベンチャー企業です。そこでは、遺伝子情報の解析に加え、システム開発も担当していました。しかし、だんだんと「事業会社で主体的にバイオインフォマティクスに携りたい」という想いを持つようになり、NECへの転職を決意しました。
バイオインフォマティクスの研究は 世界的に盛んに行われており、いずれは自分もそのフィールドに立ちたいと考えていました。だからこそ、NECのAI創薬事業部のグローバルな環境も大きな魅力でした。ベンチャー企業からの転職に不安もありました。しかし、今のNECにはオープンな風土があり、自分の経験を活かしながら働くことができています。
個別化治療を確立し、
がん以外の病気にも応用していく。
がんの治療法は、手術・抗がん剤・放射線が主な治療法とされてきました。近年、第四の治療法として注目されているのが免疫療法です。人が持っている免疫を 高め、がんの進行を押さえ込み、さらには体内に残ったがん細胞を消し去ろうとする療法です。抗がん剤や放射線治療と異なり、辛い副作用は少なくて済むというのが特徴の1つです。
AI創薬事業部では、バイオインフォマティクスとNECが持つAI技術を応用し、免疫療法で使用される個別化ワクチンの開発に取り組んでいます。具体的には、抗原(ネオアンチゲン)と呼ばれる、がん細胞特有の遺伝子変異を解析し、その中から最大の効果を発揮するワクチンを患者さんごとに製造していきます。しかし、患者さん一人ひとりの解析を実験的に進めていては時間がかかりすぎるので、解析とワクチンのレシピ作成にNECのAI技術を活用します。この療法はすでに治験が開始されており、日本企業として初となる第Ⅰ相臨床試験を実施。良好なデータを取得しており、腫瘍学会議でデータの発表も行われる予定です。
臨床試験が成功し 本格的に導入されるのは数年以上先ですが、この技術が確立できれば、様々な病気の治療や予防に役立てることができます。将来的には感染症や自己免疫疾患にも適用領域を拡大していくことが目標です。壮大な事業ではありますが、高い技術を持つNECだからこそできる 、そしてNECがやるべきことだと私は思っています。
世界が期待しているAI創薬に
主体的に関われる魅力。
NECに転職して4年になりますが、早い段階から責任ある仕事を任せてもらえています。その1つに、入社半年で担当したネオアンチゲン予測のコアシステムの開発があります。ドイツのハイデルベルグにあるNECの欧州研究所にひとりで3ヶ月間滞在。現地のバイオメディカルチームとシステム開発に取り組みました。
当時は英語も得意ではなく、スタッフとのコミュニケーションに不安はありました。でも、身振り手振りを交えたり、時にはホワイトボートを使って説明したり、なんとか作りあげることができました。この時の経験は帰国後も活きており、海外スタッフとのやりとりが「日常」になり、非常にスムーズに仕事をこなせるようになりました。これは、NECに入社したからこそ得られた成長だと思っています。
個人的な目標は、バイオインフォマティクス技術の精度をもっと高めることと、AI創薬を安定した事業に育てていくことです。誰もが個別化治療を受けられるようになると、医療の格差はきっと少なくなる。そんな社会をNECから実現させていきたいと思っています。