シリコンフォトニクスの研究開発に
挑戦できる場を求めてNECへ。
NECに入社する前は、大手メーカーで光ファイバ通信の研究に長らく携わっていました。最初の5年ほどは基礎研究に携わり、成果を毎年学会で発表。共同研究先の大学と研究開発・試作した次世代光ファイバを使った伝送実験で、当時の世界最高の性能を記録したこともあります。その後の5年は、研究成果を事業化する開発に取り組み、次期主力製品を完成させて製造移管まで成し遂げました。
自分の研究成果を製品化する達成感を味わう一方で、心の中に「新たなチャレンジがしてみたい」という気持ちがありました。ずっと向き合ってきた光導波路技術をさらに発展させ、興味を持っていた「シリコンフォトニクス(※)」の研究開発に挑戦してみたい。そんな想いが日に日に強くなっていきました。この挑戦ができる場を求めて転職活動を開始。様々な企業を検討する中で出会ったのがNECでした。
NECはシリコンフォトニクスの開発に力を入れており、まさに私のやりたいことが実現できる企業でした。しかし、リーマンショック以降の低迷を耳にしていたこともあり、少し不安もありました。しかし、話を詳しく伺うと、変革が進む中でカルチャーにも大幅な変化が生まれており、それに連動するように業績も回復しているとのこと。さらに事業部長が「シリコンフォトニクスを研究レベルではなく、あくまで事業化を目指す」と語る姿にも感銘を受けました。世界初の製品を世の中に送り出すチャンスがきっとある。そう確信できたからこそ、入社を決意することができました。
※シリコンフォトニクス:シリコンCMOS集積回路 (半導体) の製造インフラを利用してシリコン基板上に様々な機能を持った電子/光の回路を集積する技術。
新たな光デバイスチップの設計と評価に奮闘。
入社早々、重大な問題解決を託される。
入社後は、光トランシーバ(※)を開発する部署に配属されました。新規開発中のトランシーバに搭載される、シリコンフォトニクスで作製された数ミリ角の光デバイスチップの設計や評価を担当。シリコンフォトニクスのチップの測定結果を解析し、求める特性が得られているかどうかを探りながら、課題を抽出していきます。評価を担当したチップは、私の入社前に部署のメンバーが鋭意検討を重ねて設計した量産を期待するチップ。一つ一つの特性を評価するたびに良好な結果が確認されました。
しかし、評価を進める中で、ひとつの大きな問題を発見。問題解決に向け約6ヵ月の時間をこのテーマに費やしました。シリコンフォトニクスは、以前に手がけていた光ファイバとはスケールがまったく異なり、感覚的には10倍以上緻密です。また、光ファイバは円筒形ですが、シリフォトフォトニクスのチップは四角形であり、挙動も少し異なる。そうしたギャップにとまどうこともありましたが、今まで培った光導波路技術の知見をもとに、直面する問題と格闘を続けました。上司は同僚とディスカッションを重ね、結果的にはシンプルな方法で問題を解決できそうなことが判明し、信頼性試験で実証してハードルを乗り越えることができました。
入社早々、こうした成果を上げることができたのは、私にとって大きな自信に繋がりました。他にも、次期製品デバイスの設計、ソフトウェアを駆使した設計手法など、私にとって未知のチャレンジの連続でした。しかし、先輩方の指導もあって何とかスケジュール通りに設計を完了。この設計をもとにした試作デバイスが完成次第、評価に取り組む予定です。
※光トランシーバ:電気信号と光信号を交互に変換する光送受信機で、光通信において重要な役割を果たしているデバイスの一つ。
NECが秘めるポテンシャルを
もっと発揮させる原動力になりたい。
NECに入社して実感するのは、光通信デバイス領域に関して非常に技術力が高く、それを支える技術者も優秀な人材ばかりだということ。博士号取得者も複数所属しており、シリコンフォトニクス技術において高度な専門性を持ったエキスパート集団です。おそらく、世界トップクラスの技術を持った開発チームではないかと感じています。
シリコンフォトニクス技術は、光通信デバイスの超小型化や省電力化などに貢献するものであり、今後ますますニーズが高くなっていきます。その世界トップになれるポテンシャルがNECにはあると感じています。だからこそ、主力事業であるITソリューションのみならず、光通信デバイスの実力も、世界中に知らしめていきたい。私自身も、その原動力になれればと考えています。
個人的な目標としては、まずは自分がデザインしたシリコンフォトニクス技術で、新たな価値をもたらす製品を生み出したい。そして、より多くのお客様に使っていただくことで、少しでも社会に貢献していきたいと思っています。NECには挑戦を良しとするカルチャーがある。だからこそ、自由に意見しながら設計や評価を進めていくことができるのです。将来的には光通信の事業を飛び越えた仕事にも挑戦して、NECでのキャリアを最大限、楽しんでいきたいと思っています。