競争心とプロフェッショナルの姿勢。
NECで歩む研究者として未来。
ドイツの大学では物理学を学びました。私は素粒子論を研究していたのですが、素粒子論と一言にいってもたくさんの分野に分かれており、私は弦理論をテーマにしていました。素粒子とは一般的に物質の最小単位ですごく小さな「粒」だとされてきましたが、弦理論では弦のような振動しているものだと考えられており、単なる「粒」では説明できない物理現象も説明できます。日本の大学が私と同じテーマで研究を行っていることを知り、日本の学生とコミュニケーションをとりお互い情報交換を行っていました。そういった経緯もあり、日本の大学に進み、博士課程を修了しました。
NECに入社を考えたのは、ドイツにあるNECの研究所が開発している車車間通信技術の映像を見たことが一つのきっかけです。ドイツでももちろんNECという会社は知られていましたし、私自身ももともとICTの分野に興味がありました。そして、その研究内容がとても面白くNECの研究所を志望しました。
面接の時にとても印象的だったのが、プロフェッショナルの意識はもちろんなのですが、「学生時代のライバルはいたのか?競争心を燃やしていたのか?」という質問を受けたことです。元々、狭い分野を研究テーマに扱っていたこともあり、協力しながら各々に研究を行っていたのですが、やはり、企業として競争心を持って研究を行う姿勢が大切なのだと感じました。
研究の意義とその価値を捉えて。
入社して最初に任されたことは、同業他社の動向や研究に対してのリサーチでした。面接時にも感じたのですが、入社した後も、やはり企業として研究を進める以上、競争心を持って取り組まないと生き残れないという精神を感じました。NECの社員の人柄はとても温かいのですが、それ以上に研究者としてのグローバルな視点やアカデミックな部分が強いのだと思います。リサーチを終えた後はNFV(Network Function Virtualization =ネットワーク機能仮想化)の分野で研究を行いました。
この研究は事業化を考えると難しい課題が山積みで、結局事業化には至りませんでした。技術としては良いものでも、それ以外の事情で事業化に至らないことは多々あります。研究にはシーズとニーズの両方の側面があり、NECは明確に20%ルールというものが設けられています。与えられた時間の中で20%は好きな研究に費やしていいというものです。ただし、事業展開しちゃんと成果として回収が見込める研究も大切であり、バランスが重要になってくるのだと思います。
人々の暮らし、社会を豊かにする技術開発を目指して。
現在は深層学習を使った映像圧縮や配信の研究に取り組んでいます。
例えば、建設現場で実際にどういった作業を行なっているかをカメラ映像から分析するAI技術をNECは保有していますが、この分析をするには映像を現場からネットワークを通してデータセンターへ送る必要があります。ただし、映像自体がとても重いデータなのでそのまま送ると通信ネットワークがパンクしてしまいます。そこで、AIの認識精度を劣化させないための映像の圧縮・配信技術の開発を行っています。
今後の目標は自身の研究がソリューションとして活用され人々の暮らしや社会を豊かにする、そんな研究に取り組んでいきたいと思います。