未来が見えないからこそ、
自分の手でつくる経験ができた。
大学を出てまず入社したのは通信会社です。コンシューマー向けインターネットの事業企画を担当しました。ちょうどインターネット黎明期の時代であり、何をすればよいか暗中模索の時代。就職活動の時も、いくつか内定をいただいた中で、いちばん先が見えない会社を選びました。未来が見えない方が、いい意見ならば年齢に関係なく通るのではと思ったからです。結果、自由度の高い環境に恵まれて、業界初のサービスをいくつも立上げました。
10年後、外資系戦略コンサルティングファームへ転職。クライアントの多くが「そもそも何を解決すればいいかわからない」という状況に対し、課題特定、論点の構造的整理、そして優先順位の高い課題から解決策を提案し、実行を支援する。他では得難い数多くの経験ができました。その後は、化学・素材領域のグローバルメーカーへ移り、サプライチェーン・ロジスティクス領域の改革、グローバルのビジネス・トランスフォーメーションのプロジェクトに携わりました。
一見バラバラな経験ですが、共通しているのは、未来が見えない中で変革を起こし、何かを生み出していくということ。その必要があるところに、自分がいる意味を見出してきたということです。
かつて世界一だったNECが凋落。
そして、今本気で変わろうとしている。
NECは、半導体・パソコン・携帯電話など、かつて世界一・日本一だった事業を多数持っていましたが、グローバルでの大きな環境変化に競争力が低下、そして全て売却。5.4兆円あった売上も2.6兆円へ。まさに日系メーカーの縮図でした。そんな中、NECから企業変革の支援をして欲しいと依頼がありました。正直、行くかどうか、最初は本当に悩みました(笑)。当時勤務していた化学・素材メーカーでも良い評価と、海外拠点での要職のポストもいただいていましたので、さらにです。
しかし、お会いする経営層の方々が本気でNECを変えたいと思っていること、そしていろいろな改革を進めていることを知りました。私個人としても、ここ10年ほどビジネススクールで経営戦略や企業変革などを社会人に教えているのですが、「クラスでは教えているのに、あのNECが変わろうとしている今、お前は行かないのか?」と問いかけてくる自分がいたことが、背中を押しました。NECが本当に変わることができたら、同じ境遇に悩む多くの日系企業も変われるのではと思ったからです。
複雑な課題ばかりで、
当事者だけでは変えられない。
そこに我々の価値がある。
2019年1月、業務改革推進室として、NECでの仕事をスタートしました。今、約10数名のメンバーとともに、約60の改革プロジェクトを同時に動かしています。これまでも社内で多くの取組みが行われ、担当部署に閉じて解ける課題の多くは、改善が進んでいました。一方、複数の部署が関係する課題は、なかなか解けません。課題が複雑で抜本的な打ち手が必要なこと、その打ち手が今までの効率性を瞬間的には悪化させてしまい、現場からは反対されることなどが理由です。
我々の役割は、そういった課題を解決すること。課題を構造的に整理し、社外の先進的事例を参考に打ち手を考えながら、丁寧にコミュニケーションをしていきます。検討していく上で関連する課題がさらに発生すると、それらから逃げずに私たちが全て引き取っていく。そうすると少しずつ信頼や連体感を生み出され、やがて大きな変革に結びついていく。「先頭を走り、しんがりを務める」そういう姿勢で挑んでいます。企業変革には、企画立案力と企画実行力の双方が必要。これって決してAIではできない業務、どの企業でも通用する共通の概念です。
復活のために私はここにいる。
乗り越えればすごいことになる。
良い意味で裏切られたのは、社員がとても優秀であるということ。そして、厳しい環境の中でも全員が誠実に働いていました。逆に課題と感じたのは、人の流動性が低いこと。特定部署しか経験したことがない場合、環境変化への適用力が低下するからです。一人ひとりが優秀なため、環境の劇的変化の中でも、その中で頑張ってしまうのです。それが今のNECの状況だと思いました。抜本的なやり方に変えないとその頑張りには限界がくる。逆に、今の時代に合ったやり方に修正すると、それぞれの頑張りが大きなシナジーとなって会社を成長させる。
私の役割は、社員一人ひとりの頑張りがダイレクトに会社の成長につながるように、時代の変化に合わせて社内のあらゆる仕組みを正しく整えることです。これができれば、この会社は必ず復活できるという実感を得ています。過去の栄光と凋落、そしてそこから復活できた経験を持った組織は、本当に強くなります。新興するベンチャー企業もいずれ必ず曲がり角に差し掛かり、同じ壁に当たります。我々は彼らより先にそのフェーズに来ている。ここを乗り超えれば、すごいことになる。NECが本当に強さを取り戻せば、同じ境遇にいる日系企業にも変わることができるという勇気を提供できる。だから私はここにいる。この会社が変わる当事者として、やるべきことを一つひとつ実行していきます。