NEC Orchestrating a brighter world
NEC Orchestrating a brighter world

キャリア採用を4年で11倍に。同質性からの脱却をめざし、NECが実現した採用改革。

キャリア採用を4年で11倍に。同質性からの脱却をめざし、NECが実現した採用改革。
宮下 美奈子

業務改革部門 トランスフォーメーションデザイン統括部長

宮下 美奈子

外資系コンサルティングファームのコンサルタントを経験し、企業の変革に貢献できればという想いで、2021年にNECにジョイン。2024年度より現職。

大橋 康子

人材組織開発統括部 タレント・アクイジショングループ ディレクター

大橋 康子

営業からキャリアをスタートし、新卒、中途採用媒体の立上げ・制作に関わる。人事採用コンサル・アウトソーシング企業を経てインハウス人事へ転向。LINE株式会社にて中途採用、HRBPリードの経験を積み、2021年よりNECにて中途採用のディレクターに従事。

かつて、新卒採用の割合が圧倒的に多かったNEC。採用改革を経て、今ではキャリア採用と新卒採用の比率は1対1にまで上昇しました。なぜ採用方針を転換したのか、どのようにキャリア採用の拡大を実現したのか──取り組みを牽引する大橋 康子と、変革期にキャリア入社した宮下 美奈子が、それぞれの想いを語ります。

危機の裏にあった同質性の課題。多様性重視の組織に変わるため、キャリア採用を強化

なぜNECはキャリア採用を改革するに至ったのか、背景から教えてください。

大橋:NECには長年、新卒偏重の文化がありました。毎年数百人を新卒採用していたのに対して、キャリア採用は数十人とわずか1割程度だったんです。そうした中、NECは2010年代に厳しい経営危機に直面します。2016年に発表した中期経営計画も達成できず、1年後には撤回する事態に陥りました。なぜNECはここまで成長力を失ったのか──経営陣が集まって議論を繰り返していたところ、課題の1つとして挙げられたのが「同質性の高さ」でした。

新卒一括採用、年功序列といった同質性の高い組織ではグローバル競争に勝てない。外部から人材を迎え入れて、多様性を重視する組織へと変わる必要がある。そうした考えのもと、2019年にはキャリア採用を専門に担う「タレント・アクイジションチーム」が設立されました。

そして2021年に発表した「2025中期経営計画」では、「新卒採用とキャリア採用を1対1にする」という大きな目標が掲げられます。しかし当初はキャリア採用のシステムもフローもツールも何もない。そんな状態からのスタートでした。

──大橋さんご自身もキャリア入社ですが、メガベンチャーで中途採用やHRBPリードの経験を積んだ後、NECで採用改革に挑戦しようと思ったのはなぜですか?

大橋:私はこれまで「ないものをつくる」仕事をずっとしてきたんですね。キャリア採用の仕組みを新たにつくるなど、ゼロから構築する経験を散々積んできたので、次は違うことに挑戦したかった。その中でNECは、キャリア採用はすでにやっているけれど急拡大が必要という状況でした。今あるものをうまく使って発展させるというのが、DIY的な発想で新しくておもしろそうだなと。それでチャレンジすることを決めました。

──宮下さんも大橋さんと同じく2021年にキャリア入社していますが、どういう理由からNECへの転職を決めたのでしょうか。

宮下:NECに入社する前はコンサルタントとして10年以上経験を積み、その後は事業会社の改革部門で知見を深めてきました。企業改革を軸としてキャリアを築くうち、外側からコンサルタントとして関わるのではなく、企業の当事者として内側から変革に携わりたいと考えるようになったのが転職のきっかけです。

転職先を探すにあたって企業の改革部署をいろいろ見ましたが、NECが違ったのは全社横断で「業務・システム・組織」のすべてを変革しようとしていたことです。「業務改革部門」という専門組織があり、本社だけでなくグループ全体を対象とした全社改革に携わることができる。こんなチャンスがあるのはNECだけだと思い、入社を決めました。

──おふたりは入社される以前、NECに対してどんなイメージを持っていましたか。

大橋:率直に言って、「古くて、堅くて、動きが悪い」というイメージでした。「変えようとしても10年はかかるだろう」なんて思っていました(笑)。

宮下:社名に「日本」と付くこともあり、日本の企業を代表する古い会社だという印象がありました。ですので、そうした古さが残っていることを覚悟して入社したというのが本音です。

──実際に入社して、どのような印象を持ちましたか。

大橋:「NECは変わろうとしています」と口で言うだけでなく、外部から役員クラスが採用され、事業の転換にともないコンサルティングの専門組織が設立されるなど、明らかな変化が見えました。この勢いで変わり続けていけるという期待感がありましたね。

宮下:実際に働いてみると、変革に対する前向きさに驚かされました。入社してから現在まで、変革のスピードがどんどん加速している実感があります。こうしたカルチャーの転換期に立ち会えることは、とても貴重だと思っています。

価値観の衝突を越えて。リクルーティングではなく、「タレント・アクイジション」を追求。

──外部でキャリア採用をリードしていた大橋さんが最初にNECの採用現場を見たとき、どのような印象を受けましたか?

大橋:目的を持たず、ただ見よう見まねで業務をこなしているというのが率直な印象でした。「何のためにこの作業をしているの?」と聞くと、「以前からやっているので」という返答しかない。みんな目の前のことに必死で、未来を描く余裕がない状況でした。

──その状況から、2017年度には55人だったキャリア採用が、2021年度には619人と11倍以上にまで増えました。どのようなステップで採用を拡大したのでしょうか。

大橋:わずかな増員であれば従来の延長線上で対応できますが、600人ともなるとまったく違う取り組みが求められます。採用の基盤となるシステムの入れ替えはもちろん、人事制度全体を取り替えなければなりません。一気に変革はできないので、何を変えて何を残すのか、全体の地図を描くところから始めました。

これほど大規模な採用を成功させるには、誰がやっても一定の成果が出せる仕組みづくりが求められます 。そのためにはデータが必要ですが、当時は驚くことにデータが取れていなかったのです。そこでまずはデータを集め、どこに課題があるのかを把握してPDCAを回せるように変えていきました。

そうした仕組みづくりと並行して、HRBPやハイヤリングマネージャーなどいろんなメンバーに協力してもらいながら採用オペレーションも改善していきました。入社後のオリエンテーションに関しては、L&D(ラーニング&ディベロップメント)統括部の力を借り、キャリア入社者がスムーズに業務を始められるよう、4日間のプログラムを毎月のように見直しました。当初はPCが入社初日に届かないなんていうこともありましたが、とにかく課題を一つずつ改善していきました。

──そうやって採用の仕組みやオペレーションを次々と変えていくことに、既存のメンバーはすぐ順応してくれたのでしょうか。

大橋:いいえ。最初は苦労しかなかったです。タレント・アクイジションチームは、私も含め9割以上が外部から来た人材で、新卒からNECに在籍している社員はごく少数です。私たちが常識と思っていることが社内では非常識ということも多く、お互いの価値観のぶつかり合いが毎日のように生じていました。

ただ、私たちがやるべきことは明確で、リクルーティングではなくタレント・アクイジションなんです。会社が適時に適所に適材を配置できるかどうかは、すべて採用の入り口に立つ私たちにかかっている。私たちがここにいるのは、戦略にもとづいて必要な人材を獲得するためなんだと、何度もメンバーに伝えました。

そして、タレント・アクイジションの本質を学ぶ勉強会やワークショップを地道に繰り返すうちに、だんだんと自分たちの仕事はオペレーションをこなすことではないのだとわかってもらえるようになりました。今では、人材を獲得する意義や楽しさを理解してもらえていると感じます。

──タレント・アクイジションを追求する上で、人事制度はどのように変えていったのでしょうか。

大橋:ジョブの市場価値や成果に対して処遇を決める、ジョブ型人材マネジメントへと移行していきました。NECは2024年度からジョブ型を本格導入していますが、私が入社した当時はその意味がまだ社内では理解されていない状況でした。

ハイヤリングマネージャーは、人が辞めたからそのポジションを埋めるという考えで、組織の発展に向けて戦略的に人材を獲得するという視点がなかったんです。だから社内の教育にも時間をかけましたね。ジョブディスクリプションを書くだけでは人は集まらない。お互いに描くジョブや処遇がマッチしているかを知るためにも、カジュアル面談をやる必要がある。そうした基本的なことを一人ひとりに説明していきました。

──採用の現場ではこうしてさまざまな改革が進められてきたわけですが、宮下さんはキャリア採用に応募する側として、選考のプロセスにどういう印象を持ちましたか?

宮下:面接では、NECがこれからどう変わっていくのか明確なビジョンを話してもらうことができ、変革を一緒にやっていきたいという想いがまっすぐ伝わってきました。また、私の長期的なキャリアまで考え、NECでの経験がいかにプラスになるかを具体的に語ってもらえたので、入社後のイメージがしやすかったですね。

社内には多様なバックグラウンドを持つ人材がたくさん活躍していて、これからさらに増えていくと聞いたため、キャリア採用であることの不安もなかったです。私たちが変革の一端を担い、会社と共に変わっていけるんだという前向きな気持ちで入社できました。

新卒入社も、キャリア入社も。多様性によって生まれるイノベーション。

──キャリア人材が新たな環境で実力を発揮しやすいよう、入社後はどのような支援をしているのでしょうか。

大橋:内定承諾後から入社当日までの期間は、私たちタレント・アクイジションチームが一貫してサポートしています。オンボーディングは育成の観点でL&D統括部が担当し、それが終わったら入社前後での印象の変化やオンボーディングの感想などのアンケートを実施しています。

そして本人が入社前に期待していたとおりの仕事ができているかどうか、入社から3カ月目と9カ月目にもアンケートを行い、その結果をもとにPDCAを回して改善を重ねています。

宮下:オンボーディングは年々改善されていますよね。私が入社した当時もサポートはしっかりしていましたが、今はもっと手厚くなり、内容も充実していると感じます。受け入れ側も、オンボーディングが重要だという意識が根付いてきたという印象です。

個人的にも、キャリアの節目にコーチングの機会があることにとても満足していますし、支援体制はどんどんアップデートされていると感じます。

──宮下さんは全社変革に携わるためにNECへ入社したとのことですが、具体的にどのような業務を担当しているのでしょうか。

宮下:私が担当しているのは「経営・ファイナンスプロセス改革プロジェクト」です。制度会計への対応を起点に、システムだけでなくカルチャーも含めた全社的な改革を目的としてこのプロジェクトが立ち上げられました。その中で私は、データドリブン経営の定着に取り組んできたのですが、大橋さんも言っていたように最初は肝心のデータが取れていなかったんです。

各組織には確かにあるのですが、全社としてリアルタイムでは確認ができない状況でした。それをデータドリブンのカルチャーに変えるべく、奮闘してきたのが入社から現在までです。Excelベースでオペレーションがサイロ化されている状態から、横断的にデータを把握できる体制に変えていかなければならないのですが、その意義を理解してもらえるまでにかなり時間がかかりましたし、今でも変革の途上です。

ただ、最近ではデータを経営に活かす意識が高まっているのを実感しています。その機運を後押ししているのが、「クライアント・ゼロ」の考え方です。これはNECの良さがすごく表れている取り組みだと個人的にも思っているのですが、自社をゼロ番目のクライアントとしてDXを推進し、実証されたソリューションをお客様に届ける「クライアント・ゼロ」が、変革を加速させる力になっていると感じています。

──組織横断のプロジェクトを推進する上で、キャリア入社であることの苦労はありましたか?

宮下:キャリア入社だからやりにくいということはありませんでした。たとえば「この点を変えたい」と伝えると、「自分にはこういう知識があるからこの業務なら対応できる」というようにとても協力的です。新卒からNEC一筋の社員とキャリア人材がお互いの良さを認め合い、バリューを出していこうとする文化が根づいているのを感じます。

──大橋さんはキャリア採用に取り組む中で、宮下さんのようなキャリア人材がNECにどういう変化をもたらしていると感じますか?

大橋:1番は多様性です。これまでは新卒採用が中心で、上司と部下の関係が何十年も変わらないというような同質性の高い組織でした。そこへ外部の人材が新たな視点をもたらすことで、既存のメンバーが当たり前だと思っていた業務を見直し、今までとは違うアプローチを模索するきっかけが次々と生まれています。

多様な価値観やバックグラウンドを持つ人材同士が化学反応を起こすことで、イノベーションが創出されていく。そんな様子を見るたびに、キャリア採用をやってきて良かったと心の底から思います。

エンプロイヤーブランドを強化し、「一度はNECで働いてみたい」と思われる会社へ

──大橋さんは今後、NECのキャリア採用でどういうことを実現していきたいですか。

大橋:NECは企業としての認知度はありますが、エンプロイヤーブランドとしてはまだ弱く、「働く場」としての魅力は十分に伝わっていないと感じています。キャリア採用を強化していることも世間にはあまり認知されておらず、新卒採用とキャリア採用の比率が1対1だと伝えると驚かれることも多いです。

まだまだNECは人生のチョイスに入っていないと感じるので、「一度はNECで働いてみたい」と思ってもらえる会社にしていきたいですね。

そして社内においては、労働市場をつくりたいと考えています。そうすればNECの中でも個人が動きたいタイミングで挑戦したいポジションに移れるようになり、「適時適所適材」が実現できます。自分のキャリアをどうしたいかを考えて、会社をうまく利用してもらえたらいいなと思っています。

宮下:人材の流動性が高い方が会社としても強くなるので、一度外の世界を経験した人が成長してまたNECに戻ってくるというのもウェルカムですよね。

大橋:もちろんです。働くすべての人が今の自分の人生にもっともフィットするチョイスを考えたときに、NECが常に選択肢の1つとしてテーブルに上がる。それが理想だと考えています。

──宮下さんは、NECというフィールドを活かして今後どういうキャリアを歩んでいきたいですか。

宮下:これからの5年でNECはさらに進化し、挑戦できる仕事の規模も大きくなると思っています。各企業がAIなどのテクノロジーを利用してコーポレート機能を強化していく中で、NECが先陣を切って成功事例をつくれるような改革に携わることが目標です。

経営陣も5年先、10年先を見据えて変革を進めようとしているので、そこに自分のやりたいことを反映させながら、NECをより筋肉質な会社に改革していくことに貢献していきたいと思います。

──最後に、おふたりが感じる「働く場」としてのNECの魅力を教えてください。

宮下:キャリア入社して感じるNECの良さは、「やりたい」と言うとやらせてくれるところです。たとえばデータのさらなる活用を提案したときには、経営陣の後押しにより、実行に移せました。ほかにもチームの提案が受け入れられてプロジェクト化につながった経験が何度かあり、とてもスピード感のある会社だと思っています。

これからNECへの入社を検討されている方も、ぜひ自分のやりたいことを積極的に伝えてほしいですね。会社としても、その人がより実力を発揮できるポジションを考えてくれるので、これまで培ってきたスキルを活かしてキャリアを大きく広げられると思います。

大橋:NECには126年もの長い歴史がありますが、今があるのは変革を続けてきたからこそです。変わることに抵抗がなく、常に新しい方向に進もうとする前向きな姿勢は、NECらしさだと思っています。

それに、NECにはトップダウンがほとんどありません。トップが変えろと言っているから変えるのではなく、社員が自発的に「もっとこうしたい」「あそこまで行きたい」と考えて行動できるところが魅力だと感じます。

私自身、NECにキャリア入社してからは、「もっと行ける」と思ってキャリア採用を改革していくうちに、こんなところまで到達できていたという感想です。もし、私がやる仕事の範囲があらかじめ決められていたら、NECは選んでいなかったことでしょう。

人に言われてやる仕事に、おもしろさは感じないもの。だから、会社と社員が「選び・選ばれる」関係をめざす上でも、最初から仕事の範囲を決めてしまいたくはありません。NECを選ぶとおもしろそう──そんなふうにワクワクしてもらえる「働く場」を提供できるよう、これからも全力を尽くしたいと思います。

※ 記載内容は2025年7月時点のものです