NECと私、そして日本でのキャリア。
フランスで通信工学の修士号を取得、ノーテル社でのインターン経験後、アルカテル・アンスウェア(現EDSアンスウェア)とアルトランでの勤務を経て、2003年にNECフランスに入社しました。当時、フランスの大手通信事業者が、NTTドコモからライセンス供与を受け、iモードのサービス開始に向けた準備を進めていました。NECはこの新サービスを展開するための契約を勝ち取り、私はプロジェクト実行リーダーに任命されました。
2011年、NECフランスからNEC本社に数年間出向する機会を得て、来日してすぐ、スマートエネルギー事業開発本部のアシスタントマネージャーに着任しました。当時はNECがスマートエネルギー事業部門を立ち上げたばかりで、同部門ではエネルギー転換を支える蓄電池システムの提供に力を入れていました。エネルギーを出発点に、スマートシティ/産業IoT事業開発へと、日本でのキャリアを歩んで来ました。
その後、業務都合と一身上の都合により、日本に留まることを決意し、2016年から海洋システム事業部門の所属となりました。海底ケーブルプロジェクトの応札業務を皮切りに、現在は、プロジェクトマネジメントを担当しています。
経験は全て生きる、人生に無駄なことは一つもない。

NECでのキャリア、そのスタートから現在に至るまで、私が持つ物理学、数学の基礎、エンジニアリング全般に関する知識はフルに生きており、製品やシステム、技術基盤の深い理解につながっています。
NECはテクノロジーを提供する会社です。私たち社員が意識しているかどうかは別として、競合他社との大きな違いは、当社の持つ高品質なテクノロジー、および提供価値にあると言えます。
ゆえに、私たち自身が、製品の持つ特長を理解して、より良い実装に向けた提案をすることが、NECのサクセスストーリーにおいては非常に重要なファクターとなるのです。
そしてもう一つ、これまでのキャリアで学んだことのうち、おそらく最も役に立っているのは、実際のプロジェクトの中で身に着けた、様々なお客様やステークホルダーへの対応の仕方です。私自身はプロジェクトマネージャーの研修を受けて、資格も持っていますが、座学はあくまで知識に過ぎません。実際のお客様、その他ステークホルダーに向き合うための最善の学びは、実務を通じた経験なのです。
最適なタイミングで、適材適所の人材投入。
プロジェクトマネージャーとしての主業務は人材確保とチーム編成です。目下進行中のプロジェクトに対して、最適なタイミングで適材適所の人材投入を見極める能力が求められます。そのためには計画と人的リソースを組み合わせて考えることが必須となります。あまりわくわくするような仕事ではないように思われるかもしれませんが、一緒に働くメンバー全員の能力を理解している必要があるという意味で、有意義な仕事です。もちろん、私ひとりですべてを把握できるわけではありませんから、その時々で、最適な誰かにアドバイスを求める必要もあります。これにはかなりの時間を要しますし、NEC社内だけでなく、お客様との間でも、諸々の調整が必要となります。
チームビルディングに関する私の基本理念は、チームメンバー候補に対して「プロジェクトに抜擢したい理由を説明すること、もし、本人がその仕事にふさわしくないと申し出るのであれば、その声に真摯に耳を傾けること」です。
こうすることで、何らかの妥協点を見出したり、より適切なメンバー候補を探したりすることができるのです。意欲が湧かない仕事を無理にやっても仕方ないですし、なんと言っても生産的ではありません。私たちの仕事とミッションの重要性を説明することで、チームメンバーのモチベーションを高めるように努めています。
NEC海洋システム事業部門の仕事とその魅力。

海底ケーブルの仕事を通じて、NECのテクノロジーが複雑なプロジェクトにおいて果たしている役割を知るに連れ、私自身が常に、何らかの新しい学びを日々得ていることに気付きました。海底ケーブルのプロジェクトは完成までに数年を要することもあり、海底に敷設しなければならない数千キロメートルのケーブルや、海底のあらゆる地点に設置された海底装置など、多くの異なる要素が入り組んでいます。海底ケーブルの仕事は、本当に驚きの連続です。
この仕事の最大の魅力は海底ケーブルに関われることです。海底ケーブルは高性能な製品であるということ自体に、非常に興味を引かれます。関連技術の多くは、既に陸上通信網で使われていますが、全長1万キロメートル超、設計寿命25年の海底ケーブルシステムに適用するには、技術の細部や限界について慎重に考慮することが求められます。
同時に海底ケーブルは、私たちの日々の暮らしに活力を与えます。いつでもどこでもスマートフォンで海外の動画を楽しめること、テレビで映画を観たりできること、それらはすべて海底ケーブルのおかげです。海底ケーブルがなければ、通信はできても、必要最低限のものになってしまいます。もはや、海底ケーブルは私たちの日常生活に不可欠なものとなっているのです。
この日本で、NECのような会社で働けることも、私にとって本当に喜ばしい経験となっています。
グローバル企業の一員として働くことを通じて、達成感と自身の仕事に対する大きな喜びを得ています。同時に、NECではジョブローテーションの機会も多く、現在とは異なる業務の経験や、勤務地を移動する機会も提供されています。また、社員がお互いに協力し合う職場環境であるため、孤独を感じることは決してありません。この点も、NECがとても働きやすい会社になっている理由です。
日々直面する課題を克服しながら。
どの会社、職場においても、日々の業務で直面する課題や困難があります。そのひとつが膨大な業務量です。もちろん、プロジェクトマネージャーは常に多忙なポジションですから、その職務にある限り、誰もが対処しなければならないことです。私の日常業務には、お客様対応、プロジェクトマネジメント、報告、そして、ステークホルダーが置かれている状況に常に注意を払うことも含まれています。そして目下のところ、英国や米国のお客様と連絡を取り合いながら大西洋横断ケーブルのプロジェクトに取り組んでおり、まったく異なるタイムゾーンで開かれる会議への参加も日常業務のひとつになっています。
もうひとつの課題は、現在NECが関わっているプロジェクトや新規事業の数が膨大であることです。人材不足とまでは言わないものの、追加のリソース投入を考えてもよい状況にあることは確かです。
そして現在の職務においては、「海底ケーブルビジネス全体像の理解」が最大の課題と言えます。
海底ケーブルのプロジェクトは大きく分けると2つのフェーズで成り立っています。1つ目は、ケーブル、中継器、その他機器などからなる海底ケーブルシステム自体の製造フェーズです。2つ目のフェーズでは、実際にケーブル敷設船を出航させて海底ケーブルや中継器を敷設します。
この業界では、2種類の人間、すなわち、実際に船上業務経験がある人と、ない人がいると言われています。もちろん、船上業務経験がある人の方が、現場の諸事情をよく理解しているわけですが、私は船上経験がありませんので、これら現場で起こりうる事象について未だ勉強中です。
将来への展望。

私の将来に向けた抱負は、実際のところ、かなり現実的なものです。数年がかりの計画に取り組むプロジェクトマネージャーとして、私の第一目標は、お客様が望むスケジュールに沿ってプロジェクトを確実に完了することです。この点については、プロジェクト開始時から日々尽力してきました。この目標を達成できれば、あるいは少なくとも達成に近づくことができれば、成功と言えると思います。
さらに、ゆくゆくは、NECがこの業界で確固たるポジションを確立するために必要な入札案件やプロジェクトにも、取り組みたいと考えています。非常に競争の激しい海底ケーブル業界においてNECは現在、グローバル市場トップ3のポジションにいます。NECが競争で優位に立つこと、あるいはこのレースで現在のポジションを維持していることへの貢献は、私が誇りに思えることです。
NECでのキャリア形成。
NECでのキャリア形成に関心を寄せる方にアドバイスをするとしたら、ご自身の専門分野に関する勉強、および、テクノロジーに関する予備知識を習得しながら、その業界で何が起こっているか?理解を深めることをお奨めします。また、海外出身者にとって、NECのような日本の会社組織は、慣れ親しんだものとは違うと感じるかもしれませんので、入社したら周囲にいる社員との会話を通じて理解を深めるとよいでしょう。当然、新たな環境への適応は必要ですが、きっとすぐに重要な役割を果たしながら、会社への貢献もできるようになると思います。
日本での生活は、実際のところ、それほど大変でないと思います。東京は大都市ですが、利便性に優れています。手ごろな価格で都心に住めて、あらゆるものが非常によく整ってもいます。また、出身国によっては、既に都内在住の同国出身者同士のコミュニティがあるかもしれません。東京は大都市なので、エンターテインメントをはじめとした、多くの物事にもアクセスできるでしょう。東京は、住むにも働くにも素晴らしい場所であると分かっていただけると思います。
NECへの入社に関心があるものの、物理的な距離を理由に、飛び込むことに迷いがあるならば、ためらわないでほしいです。NECでの経験やキャリアの旅路はとてもエキサイティングなものになるでしょうし、キャリアパスはいつでも変えられます。私自身の経験から、NECチームの一員になることは、個人レベルでも職務経験レベルでも皆さんにとってきっとプラスになると思います。