NEC Orchestrating a brighter world
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生体認証が創る、デジタルの未来——NECと社会の変革を目指して

青木 規至

デジタルビジネスプラットフォームユニット
テクノロジーサービス部門
生体認証・映像分析統括部
メタバースグループ

青木 規至

内田 旭美

政策渉外部

内田 旭美

※2022年11月公開。所属・役職名等は取材当時のものです。

2020年に、わずか1.5カ月で500台が完売した日本電気株式会社(以下、NEC)のトゥルーワイヤレス型ヒアラブルデバイス。プロジェクトが2年の時を経てアップデートされ、再始動しました。事業企画者でありプロジェクトをリードする青木と、入社2年目ながら官民両面のマーケティングを展開する内田が、同製品に賭ける想いを語ります。

“持ち運べる会議室”プロジェクトが再始動——グローバルで再販し、国に政策提案も

プロジェクトをリードする青木(右)と官民両面でのマーケティングを担当する内田(左)

“トゥルーワイヤレス型ヒアラブルデバイス”の新規事業を企画したのは、デジタルビジネスプラットフォームユニット テクノロジーサービス部門 生体認証・映像分析統括部に所属する青木。約半年をかけてプロジェクトを企画し、2020年に先行販売を行いました。製品情報はこちら

青木トゥルーワイヤレス型ヒアラブルデバイスは、NECの独自技術が詰まったワイヤレスイヤホンマイクです。集音した音声からデバイス装着者の特徴を効率的に抽出する技術により、どこにいてもクリアな音声を伝えることができます。

さらに、生体認証のひとつである“耳音響認証(特許出願中)”技術により、装着者の耳穴の形状で決まる音の反響から個人を特定。ヒアラブルデバイスが個人を認識して、たとえば、セキュアに音声メモを残すようなアプリケーションを開発することが可能です。

2年前、このデバイスの市場性を見極めるために、応援購入サービス『Makuake』 において“持ち運べる会議室”と銘打って500台限定で販売したところ、1.5カ月で完売に至りました。

“持ち運べる会議室”を市場が求めていることが証明され、事業化を加速しようとしたその矢先、世界的な半導体供給不足が発生。あれから2年の時を経て、今回のMakuake Globalプロジェクトを再始動させることになりました。

青木今回のMakuake Globalでの挑戦は、日本だけでなく、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、台湾を含むグローバルで展開します。また、ヒアラブルデバイスとスマートフォンで、今までにない新しい体験を得られるように、購入者にはアプリケーション開発用のSDK(ソフトウェア開発キット)を提供します。このプロジェクトを通して、耳音響認証というNECならではのユニークな技術を世界中の人に知ってもらい、10年後には、ヒアラブルデバイスをスマートフォンのように誰もが当たり前に使う世界を実現したいと考えています。

並行して、今回は中央省庁への政策提案も。担当するのは、政策渉外部  経済産業省グループの内田です。

内田私は経済産業省に向けてNECの技術を活用した政策提案を担当しています。今回のプロジェクトでは、ヒアラブルデバイスをWeb3やメタバースと関連付けた政策提案をして、当社の事業を拡大するサポートをしていきます。

メタバースやWeb3がトレンドのいま、注目を集める“耳音響認証”

2020年のプロジェクトを知って入社を決意した、入社2年目の内田

2020年度に事業化の目途は立ったものの、世界的な半導体供給不足により量産に入れず、今回のプロジェクト再始動まで2年を要しました。始動を待っていた青木でしたが、2年の間にトレンドが変わったことで、耳音響認証技術のニーズが増したと話します。

青木この2年間でメタバースやWeb3に注目が集まるようになり、デジタルコンテンツを利用する際の本人確認の必要性や、世界的にパスワードレスの動きが高まってきました。デジタル空間での本人確認はNECが得意とする生体認証技術で解決できますが、最近は、耳音響認証が注目されるユースケースが増えてきています。

たとえば、リモートで競い合うeスポーツのような世界では、ログイン後もプレイ中の本人確認をずっと“し続けたい”というニーズがあります。指紋認証だと指を指紋検出センサに置き続けなくてはいけないし、顔認証はカメラに顔を出し続けなくてはいけない。

一方、耳音響認証なら、ヒアラブルデバイスを耳に装着しておくだけで本人認証を常時行えるので、ユーザビリティとして優位です。2年前はオンライン会議での通話アクティブノイズキャンセリング機能への反響が多かったのですが、最近は耳音響認証技術に対する企業様からの問い合わせが増えました。とくに、圧倒的に利用時間が増えたオンライン・ミーティングに参加する際のミーティングIDとパスコード入力の手間を、ヒアラブルデバイスの生体認証を使って解消したい、という期待が高まっています。ヒアラブルデバイスはそのままイヤホンマイクとしても利用でき、かつ加速度センサを使えば、カメラオフの状態でもリアクションできる可能性も秘めているため、とても相性の良いユースケースとなります。

このトレンドの変化を受けて、すかさず動いたのが、内田。

内田2022年11月現在、経産省でもメタバースやWeb3産業を盛り上げるための課題を検証している段階です。たとえば、メタバースに入る媒体物といえばヘッドマウントディスプレイが主流ですが、価格面や小型化が難しいなどの課題があります。そんな中、映画のワンシーンを見て思いついたんです。ヒアラブルデバイスで解決できるのではないかと。『これを政策提案につなげたい!』と考えたとき、Makuakeで販売に成功した青木さんの記事を思い出しました。

2年前、学生だった内田はMakuakeのプロジェクトページを見ていました。大企業でありながら先進的な取り組みをする会社と知って、内田はNECへの入社を決意。青木とは運命的な縁がありました。

内田さっそく青木さんに相談したところ、快く連携してくれ、ヒアラブルデバイスを政策提案することになりました。提案の軸は、日本としてメタバースをグローバルにビジネス展開するために、ヒアラブルデバイスが既存とは違う日本のキラーコンテンツになるのではないか、というものです。

耳音響認証を日本独自の技術として展開しようと動き始めています。

官民両面から新しいデジタル空間を——NECの変革もプロジェクトを後押し

青木はNECのカルチャー変革もリードする

経産省への政策提案は、今まさに進行中だと言います。

青木政策提案のステータスとしては、9月に経産省の担当者の方が来社され、製品を紹介したところです。担当者には、『そうそう、こういうデバイスがほしかった!』と期待感を持ってもらって、今後、どんどん提案を進めていこうという段階です。

内田は官民で連携してプロジェクトを進めることに情熱を注いでいます。

内田国は現在、メタバースやWeb3の製品に関して、どういう課題があるかを検討したり、ニーズを市場調査したりしています。当社としても、市場に製品を出しながら、課題やニーズを国と共に検討していきたいと思っているところです。

青木も、官と民の両面からヒアラブルデバイスの世界を広げていきたいと意気込んでいます。

青木国とNECだけではなく、アプリ開発会社など、いろいろな民間企業を巻き込んで、ヒアラブルデバイスを普及させたいと思っています。そして、一番大事なのが、ユーザーの心をいかにとらえるか。一般コンシューマーに直接価値を届けるために、Makuake Globalでチャレンジすると同時に、国や他の民間企業と連携してコンシューマー向けサービスを準備したいと考えています。

社内では、開発者、技術者はもちろん、他の企業にアプローチする営業とも協力体制を築いています。政策提案については、経産省にとどまらずデジタル庁、総務省などへも提案を展開していきたいと内田と話しているところです。

デジタルの未来をつくるプロジェクトに、内田は大きなやりがいを感じていると話します。

内田これからの社会を自分たちの手で創出していくことにとても魅力を感じています。NECの最先端技術を活用してグロースさせていくサービスは、新しい市場のニーズを生み出したり、新しい社会の“当たり前”をつくっていくことにつながると思っているので、参画できて楽しいです。

また、熱量の高いメンバーと働けることにも喜びを感じているという内田。

内田社内には『新しい社会価値を、新しいNECを!』という気概があるメンバーが多く、熱量をもって働いている人たちと一緒に次のNECをつくっていけることも嬉しく感じます。

青木もまた、NECの変革を感じると語ります。

青木2年前の成功を機に、内田をはじめ、『協力できます』と手を差し伸べてくれる仲間が増えました。この流れは、NECの“カルチャーの変革”が後押ししていると思います。2014年に当社が“社会価値創造企業”を目指すと宣言して以来、社内では『コンシューマー市場の新しい社会価値を作りたい』という意欲が高まってきました。内田のような若い世代がチームに加われば、未来は安泰だと思います。

既存の枠組みを超えられるNECなら、より良い未来を実現できる

NECの変革をリードする青木。自分の想いを伝え続けることを大切に前進してきたと語ります。

青木入社以来、私はスマートデバイスでもっと世の中をより良くしたいと信じて業務に携わってきました。当初は携帯電話事業に携わり、異動後も『スマートデバイスでより良い世界をつくりたい』と社内で語り続けた結果、ヒアラブルデバイス事業にアサインされました。多くの人が味方になってくれたのも、自分の想いを一人ひとりに丁寧に伝え続けたからだと思っています。粘り強くオセロの石の色を1枚ずつ変えていけば仲間が集まり、想いを実現できる。NECはそんな会社だと感じます。

一方、入社2年目の内田が大切にしているのは、既存の枠組みに左右されないこと。

内田高い技術、充実したキャリアをもつ人が多いNECで、未熟な私が貢献するにはどうしたらいいか。それには、既存の枠組みを越えてコラボレーションを仕掛けることしかないと思っています。また、ユーザー視点をもち続けることも大事にしている点です。私自身、20年以上ユーザーとして生きてきました。何が人のワクワク感をかきたてるのか、何が人の心を動かすのか、ユーザー視点からアイデアを提案していくことで、会社の力になれると思っています。

今後の取り組みついては、2年前の形を再現するのではなく、新しいチャレンジになるだろうと語る青木。 

青木Makuakeでの再挑戦には、新しい試みがふたつあります。ひとつ目はグローバルで販売すること。ふたつ目として、応援購入者が一定数集まらなければ先に進めないというハードルを設けました。2年前は0を1にできたので、今回は1を1.1に進めたい。その先に、1.1を10、100、1000にするフェーズに早くたどり着くことを事業ビジョンとしています。そして、一番期待しているのは、NECの事業として成功させるだけでなく、参画するみなさんが共感して、より良い社会を一緒につくる仲間が増えることです。

“仲間が増える”ことには、内田も大いに期待しているといいます。

内田ヒアラブルデバイスの取り組みやアプローチは、これからのNECの姿を体現していると思っています。私が学生時代に感化されてNECに入社したように、このプロジェクトに関わる社員の姿が、NECに次世代の人が集まる契機になればと思っています。そのためにも、自分は国に対してうまくアプローチしていきたいです。

10年後、誰もがヒアラブルデバイスを使う世界になっているか──これからのNEC、これからの社会を背負って、ふたりは走り続けます。

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