NEC Orchestrating a brighter world
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生体認証とIDが生む新しい体験で、社会のあり方をアップデートせよ──「NEC I:Delight」ビルCX

及川 典子

クロスインダストリーユニット
クロスインダストリー事業本部

及川 典子

1988年に新卒で入社。システム営業、コンサルティング、サービスの事業企画などに携わる。自らの意思で新事業開発を担うクロスインダストリー事業本部へ移り「NEC I:Delight」プロジェクトに参画。

奥山 玄

デジタルビジネスプラットフォームビジネスユニット
デジタルプラットフォーム事業部

奥山 玄

2002年に新卒で入社。組み込み機器向けのソフトウェア研究開発に10年以上従事。営業を経験したいと社内公募でネットワーク製品の拡販に携る。再び社内公募で開発部門に復帰し「NEC I:Delight」プロジェクトに参画。

清水 元

エンタープライズビジネスユニット
デジタルインテグレーション本部

清水 元

2018年に新卒で入社。製造業向けソリューション営業に携わり、デジタルインテグレーション本部へ異動。森崎とともに無人店舗開発に携わり、2020年からクロスインダストリー事業本部と兼務に。「NEC I:Delight」のソリューション開発に携わる。

森崎 充敬

エンタープライズビジネスユニット
デジタルインテグレーション本部

森崎 充敬

2002年に新卒で入社。中央研究所で位置情報関連の研究開発に携わり、製品化とともに事業部へ。オフィス向けソリューションに携わったのち社内公募でリテール向け無人店舗開発を担当。2020年から「NEC I:Delight」プロジェクトに参画。サービスの企画開発を担当。

※2022年3月公開。所属・役職名等は取材当時のものです。

前例のないインキュベーション。NECの生体認証で、人々に”Delight”な体験を。

時は2019年に遡る。当時、NEC社内では次代の中核事業を創出すべく、“プロジェクト ダーウィン”と銘打たれたインキュベーションプログラムが推進されていた。そこで検討された事業のひとつが「NEC I:Delight(アイディライト)」だ。
この事業の発案時点を振り返り及川は語る。

及川:その頃、NECでは世界トップレベルの顔認証技術を活用し、空港内を顔パス(※)で搭乗できるサービス『One ID』など、生体認証とIDを紐づけて新たな顧客体験を提供するユースケースがいくつか形になり始めていました。それを、たとえば空港内だけではなく、ホテルのチェックインやショッピングの決済にまでシームレスに繋ぐことができれば、より価値のある体験を広く社会にもたらせるのではないか。そんなアイデアから『NEC I:Delight』というコンセプトが生まれたのです。

生体認証とIDを融合して、一度の生体情報登録で生活上のさまざまなサービスを連携し、ユーザーに”Delight”な体験を一貫して提供する。未来に向けたコンセプトのもとで新たな事業が企画され、中期経営計画においても投資が決定した。
「NEC I:Delight」の世界観を実現するサービスプラットフォームの市場投入を目指し、2020年11月にプロジェクトが正式に発足。事業化に向けてのプロジェクトでは、官民連携や業種横断で新事業開発を行う「クロスインダストリーユニット」がビジネスデザインを。そして、社内の技術リソースを集約してDXを推進する「デジタルビジネスプラットフォームユニット」が製品開発を担当した。まったくのゼロベースから、いままでにない世界を創り出すチャレンジが始まった。

※顔パス:各手続きで「搭乗券」や「パスポート」を提示することが不要となるサービス(国土交通省航空局「空港での顔認証技術を活用したOne IDサービスにおける個人データの取扱いに関するガイドブック」より)

組織を整えながら、製品を開発する。待ち受けていたのは、スタートアップの苦労。

まるでスタートアップを起ち上げるような感覚だったと、この開発プロジェクトをリードする役割を担った奥山は振り返る。

奥山:二つの異なる事業部門が連携して事業を創り上げていくため、その組織づくりから着手しなければなりませんでした。さらに『NEC I:Delight』について決まっていたのはコンセプトだけで、具体的なサービスは白紙の状態。どのような製品を開発し、どのようなメニューを設け、どのように運用していくべきか。ユニット間で整合性を図ってゼロから企画していかなければならず、それは私にとって大きなチャレンジでした。

これまでの事業開発とは次元の異なる、前例のないプロジェクト。確かなセオリーもマニュアルもない中、プロジェクトの主要メンバーたちは奮闘した。最前線でサービスの企画をマネジメントした森崎もその一人だ。

森崎:このサービスは3つの要素から成り立っています。1つ目は生体認証とID管理を統合するプラットフォーム。2つ目は、このプラットフォームと連携して入退管理や決済などの機能を提供するアプリケーション。さらにユーザーとのタッチポイントとなる生体認証エッジのハードウェアが3つ目の要素です。
『NEC I:Delight』が掲げる世界観を真に実現するためには、この3つが高度に融合し、連携しなければなりません。それぞれの開発が個別最適に陥らないよう、実務にあたる技術者たちと密にコミュニケーションを取りながら、チーム間の意識を合わせて企画を具体化していくことに力を注ぎました。そのためにエンジニアと常に目指すべきゴールを共有し続けていました。

このプロジェクトは異なる背景を持つ事業部のメンバーが集まってスタートした。しかし、同じ目標、同じ価値観を共有しながら前進を続けたからこそ、スタートアップ企業のようなカルチャーが根付いていった。

NEC自らが実験台に。サービス価値を実感した本社ビル実証実験。

プロジェクトを成功させるためには、何よりもコミュニケーションによる意思統一が重要だという認識のもと、あらゆるレイヤーでミーティングが頻繁に実施された。時には意見が衝突することもあった。しかし、サービスのあるべき姿を何度も共有しながら、ハードルを乗り越えていった。
並行して「NEC I:Delight」の価値を証明するためのPoC(概念実証)も開始された。まずターゲットに据えたのは、ビルCX(カスタマーエクスペリエンス)における活用。まず、NECを”実験台”とすることに決めた。NEC本社ビル内において、顔認証でオフィス内のあらゆるイベントに対応できる環境を整備。自分たちを含む社員で「NEC I:Delight」ユーザー体験テストを行うという試みだ。
森崎とともにサービスの企画に携わった若手の清水は語る。

清水:オフィスへの入退室はもちろん、PCへのログイン、ロッカーの開閉、さらには社内の食堂や売店での決済まで、すべて顔認証で行えるシステムを本社に開発導入しました。当時まだ入社数年目だったこともあり、部門間の意見を調整しながら開発を進めていくことに苦労もありました。しかし、こうして実際に形になるとあらためてサービスの価値を実感。社員からも『こんな体験は初めてだ』という反応が寄せられ、セキュリティに関しても問題はなく、大きな手応えを感じました。

森崎もサービスの可能性を再認識したという。

森崎:昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大で、生活のあらゆるシーンで非接触へのニーズは大きくなっています。『NEC I:Delight』はこうした社会課題解決に大きく貢献するサービスであり、いま私たちが取り組んでいるのは世の中を変えていくチャレンジだと、モチベーションがますます高まりました。

自社を実験台にしたからこそ持てた実感は、プロジェクトをさらに前進させる原動力になっていった。

ようやくスタートラインに立ったばかり。これから「NEC I:Delight」の本領を発揮させる。

「NEC I:Delight」のPoCは、ビルCX領域以外でも繰り広げられた。たとえば和歌山県・南紀白浜。空港、ホテル、レジャー・商業施設での観光客の行動を、生体認証でつなげて利便性の向上と新しい体験を旅行者に提供する実証実験もローンチ。こうした検証も重ねつつ、約1年の開発プロジェクトを経て、2021年10月に「NEC I:Delight」のサービスはリリースされた。奥山は言う。

奥山:クラウドを活用したインフラ基盤、その上で機能するアプリケーション、さらにはエッジなどのハードウェアまで、すべて自ら開発できるのがNECの強みであり、みんなが同じ方向を向いた時の突破力は絶大です。だからこそ、前例のないサービスの開発もスピーディーに実現できたのだと思います。

サービスはリリースされたが、森崎も清水もさらにその先を見据えている。

森崎:顔以外の生体認証も導入して利便性を高めていきたい。

清水:課題を潰しながら本当に身近なサービスにしていきたい。

と意気込む。
及川も、このサービスはまだスタートラインに立ったばかりだと言う。

及川:『NEC I:Delight』によってもたらされる世界では、ひとつのIDにいろいろなデータが紐づくことになります。生体認証によってあらゆる生活の場面でシームレスにサービスを享受できる環境は整いましたが、今後はこのデータを高度に活用することで、一人ひとりにさらにより良いサービス、より良い体験を提供できればと考えています。

一人ひとりの体験が変われば、きっと社会の仕組みも変わっていく。「NEC I:Delight」がプラットフォームとなる社会へ向けて、彼らの挑戦はまだスタートしたばかりだ。

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