NEC Orchestrating a brighter world
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前代未聞のモバイルネットワーク完全仮想化。NECの技術で「世界初」の通信を開通せよ――楽天モバイル社ネットワーク完全仮想化

安部 友貴

ネットワークサービスビジネスユニット
第二ネットワークソリューション事業部

安部 友貴

2020年にキャリア入社。外資系企業に在籍し米国やイギリスなど様々な国でキャリアを積む。世界初のプロジェクトへの挑戦に魅力を感じNECに参画。

Kalaswan Datta

ネットワークサービスビジネスユニット
第二ネットワークソリューション事業部

Kalaswan Datta

2012年にキャリア入社。インドの通信事業者などでITエンジニアとして活躍したのちにNEC インディアに入社。2018年に楽天モバイルプロジェクトにアサインされ日本へ。

渡邉 正弘

ネットワークサービスビジネスユニット
第二ネットワークソリューション事業部

渡邉 正弘

2006年に新卒入社。モバイルコアノード開発およびオペレーションシステム開発に従事し、2017年に米国Netcracker社へ赴任。日本へ帰国後、楽天モバイルプロジェクトにアーキテクトとしてジョイン。

※2022年3月公開。所属・役職名等は取材当時のものです。

国内外から実力あるエンジニアが招集され、世界初へのチャレンジが始まった。

大手3社が市場を占める日本の携帯電話業界に、第4のキャリアとして果敢に新規参入した楽天モバイル社。同社のチャレンジは、技術的な面からも世界的に大きな注目が集まっている。それは、完全仮想化されたアーキテクチャに基づく、5Gモバイルネットワークによるサービス提供を実現していることだ。エンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークの構築は世界初であり、その実現に大きく貢献したのがNECだ。2018年に楽天モバイル社から指名を受け、NEC社内でプロジェクトが立ち上がった。そのメンバーの一人が渡邉である。
彼が担当したのは、通信事業者が提供するサービスを管理するOSS(※)の完全仮想化だ。

渡邉:前代未聞のチャレンジであり、技術的に可能なのかという思いもありました。しかも、楽天モバイル様側は外国籍の方も多く、まさに多国籍でプロジェクトを進めていくことになります。しかし、新しい通信事業の立ち上げにゼロから関われる機会などそうそうありません。不安半分、期待半分というのが当時の率直な気持ちでした。

そう語る渡邉は新卒でNECに入社。通信事業者向けのコアノードやオペレーションのシステム開発を経て、子会社である米国Netcracker社へ赴任。キャリアを重ねて、このプロジェクトに参画した。
そして、渡邉と同じOSSの開発チームで奮闘したのが、インド出身のKalaswan(カラスワン)だ。NECのインドの現地法人に在籍する通信技術者だが、このプロジェクトにアサインされて来日。

Kalaswan:新しいテクノロジーを使って、世界初となる挑戦にクライアントとともに取り組める。そのことに、とてもワクワクしながら日本に来ました。実は大学生の頃、カンファレンスで訪れた日本に恋をしてしまったので、この国を訪れること自体にもワクワクしていました。

と、当時の心境を語った。期待と不安が入り混じりながら、楽天モバイル社とNECの挑戦が幕を開けた。

※OSS:Operation Support System。通信業者のオペレーション業務を支援するシステムの総称。

あるべき姿をゼロから描く。スタートアップの苦しさと、楽しさと。

渡邉がプロジェクトに参加したのは、楽天モバイル社が設立されたばかりのタイミングだった。

渡邉:OSSは通常、お客さまの業務ありきで、それを効率化するためのシステムを構築していきます。しかし、今回は完全なスタートアップです。裏返せば、あるべき業務をゼロから自分で形にできるということ。最初から業務を自動化することを念頭に『世界で最も優れたOSSを創ってやろう』という意気込みで開発に臨みました。

と渡邉は当時を振り返る。
ゼロからスタートしたOSS開発だったが、OpenStack(※1)の仮想化プラットフォームに精通していたKalaswanはメキメキと頭角を現していった。

Kalaswan:自分で一からアーキテクチャを決めるのは、とてもやりがいのある仕事でした。渡邉さんとホワイトボードの前で何時間もアーキテクチャを検討したのを覚えています。それに、通常ならばお客さまが担う『プロダクトオーナー』を託されたことも、エキサイティングな経験でした。

さらに、完全仮想化技術はモバイルコアネットワークシステムである5GC(※2)にも及んでいる。SA(※3)方式の5GCも楽天モバイルと共同で開発しており、その最前線にいるのが安部だ。外資系の通信機器メーカーからの転職で、世界初のプロジェクトに挑戦できることに大いに魅力を感じてNECに参画した。

安部:楽天モバイル様側のメンバーは外国籍の方々が多く、コミュニケーションはすべて英語。しかも、ベンチャーマインドにあふれる方々なので、とにかくスピードが求められる。NEC側のメンバーは当初、英語での議論やスピード感にとまどうこともあり、そこに課題感を持っていました。

全員が、ゼロから産み出す苦しさも楽しさも味わっていた。前例もリファレンスもない。そんな状況の中で、一人ひとりがもがきながらも、世界初の実現への挑戦を続ける日々が続いた。

※1 OpenStack:AWSのようなクラウドコンピューティングを実現するためのソフトウェア。
※2 5GC:5th Generation Core network
※3 SA:Stand Alone

今、ここが世界の最先端だ。自分たちで解決策を見つける日々。

米国、イギリスなど様々な国での経験を持つ安部は、多国籍なメンバーがひしめくプロジェクトを力強く牽引していった。

安部:NECが開発した5GCのソースコードをベースに、先方が望む機能を実装するための仕様を策定していく。それが私たちの役割でしたが、英語での会話や資料作成など、コミュニケーションも共同開発する上でのボトルネックでした。

そんな中、私は外資系企業で長年キャリアを積み、こうした環境に慣れていました。だからこそ率先してお客さまと折衝を進めていきました。このプロジェクトを通じて、NECという会社を強くしたい。海外で勝ち抜ける企業にしたい。そんな思いを抱きながらプロジェクトを前へ前へと進めていきました。

渡邉とKalaswanも、仮想化対応のOSSという難題に全力で立ち向かっていった。

渡邉:私たちが挑んでいるのは、世界でまだ誰も成し遂げていないテーマであり、ネットを検索しても答えは出てきません。どんなに行き詰まっても、このチームで答えを探すことしか、解決策はありませんでした。

大変でしたが『ここが世界の最先端だ!』という高揚感を味わいながら常に仕事ができた。そんな経験はなかなかできないと思いますし、議論と検証を重ねて初めて完全仮想化によるネットワークの構築が成功した瞬間は、お客さまも含めて思わずみんなでハイタッチして感激を分かち合いましたね。

と熱っぽく、当時を振り返った。
楽天モバイル社は2020年4月に携帯キャリアサービスを正式に開始。その時点で完全仮想化されたネットワークの上でサービスが提供されていた。そして2020年9月には5Gサービスの提供がスタート。渡邉やKalaswan、そして安部たちが世界初を、まさに成し遂げたのだ。誰もが想像した以上のダイナミズムを、全員が感じていた。

モバイルネットワーク仮想化の輸出を機に、NECの技術を世界に広めていきたい。

安部が手がけているSA方式の5GCも、次世代サーバー上での完全仮想化による5Gサービス提供へ向けて急ピッチで開発が進められている。安部はこう語る。

安部:昨今のコロナ禍でも『ワンチーム』になって課題を克服していくことに大きなやりがいを覚えています。自分たちがモバイルネットワークのテクノロジーの常識を変え、新たな歴史を創っていく。そんな未来を思い描きながら、目の前の課題に取り組んでいます。

Kalaswanは、引き続きお客さまとともにOSSの性能をさらに向上させることに取り組んでいる。そして、この開発の意義をあらためて実感している。

Kalaswan:私はエンジニアとして環境に優しい技術を創り、社会に貢献していきたいという思いがあります。そしてこのプロジェクトは、まさにそれを叶える取り組みだと考えています。

と真剣な眼差しでKalaswanは語る。
仮想化によるソフトウェア制御にAIを適用し、利用状況に応じて基地局で消費される電力量をコントロールできれば、大幅な省電力化を図れる。Kalaswanたちはいま、ネットワークのオペレーションに先端テクノロジーを導入し、環境負荷の少ないモバイルインフラという新しい価値の創出に力を注いでいる。
そして渡邉は、こうしたNEC発の技術を世界に向けて発信していくことに、これからチャレンジしようとしている。

渡邉:楽天モバイル様は、完全仮想化のプラットフォームをRCP(※1) というパッケージにして、世界への輸出を開始しています。この機会にNECの技術も世界に広げていきたい。NECはOpen RAN(※2)と5GCの両方を駆使してネットワークを構築できる日本で唯一のベンダーです。そのケイパビリティをもってすれば、必ず世界で勝ち抜いていけると信じています。

世界初という点が、全世界という面に広がっていく。プロジェクトの本当の挑戦は、これからはじまるのかもしれない。

※1 RCP:Rakuten Communications Platform
※2 Open RAN:相互運用可能でオープンな無線アクセスネットワーク

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