ユニークな研究を
ソリューションとして社会に役立てていく。
幼い頃から物事の成り立ちにとても興味があり、一番好きな教科は理科でした。大学では物理を専攻するのですが、直前まで化学か物理かで悩みました。ちょうどその時期に日本人がノーベル物理学賞を受賞したというニュースが出て、そんな後押しを受けて物理学を選びました。物理学科での研究も非常に興味深かったですが、もともと自分の中では、博士課程に進んで大学で研究を続けるというよりは就職しようと考えていました。そうして就職活動のタイミングとなり、物理系の学生向けの企業合同の説明会に参加した時にNECと出会いました。
NECの説明会で紹介されたテーマがユニークで、コンクリートの振動を撮影した映像から内部のヒビを検知したり、メロンのしわで個体を認証するなどとても興味深い内容でした。これまで深く知る機会のなかった画像認識技術分野での就職を考え始めたのもこれがきっかけでした。仮説と検証を重ねて期待の動作をするモデルを構築するというやり方が物理の研究と重なる部分もあり、さらにそれが事業価値として社会に活かされ私のモチベーションにもつながる。そう考えNECに入社を決めました。
研究を続ける意義と成果を考え抜く。
入社後、物体検出系のテーマに着手し、先行研究の再現実験に取り組んだのですが、実験用に公開されているコードが不完全で中々結果を再現できず苦しみました。別の部署の方にもヒアリングしながら取り組んだことで複雑な物体検出での処理や実装の詳細や落とし穴がどこにあるのかなど多くのことを学ぶことができました。その時のノウハウは以降様々なテーマで役に立っています。
次のテーマでは、インフラへの活用を想定した異常や劣化の予兆を検知する技術の研究を行いました。実際に異常が起こる前後のインフラ上での実験や撮影は難しいため、バナナの表面に現れる斑点の出現の様子を撮影して技術の検証を行いました。少し変わった実験でしたが、インターンや外注の方と共に進め、国際学会発表まで一通り経験することができました。
入社2年目からはこれまでの研究とは違い、より実用化を見据えたテーマで事業部からの委託研究にも取り組みました。内容としては衛星写真から船舶、航空機を検出するというものですが、ノイズや湾曲が発生する衛星写真から情報を読み解くことは人でも難しいため検出技術だけでなく正解データの作成にも苦労しました。さらに委託研究という側面から、これまでの研究と違い、与えられたスケジュールの中でどこまで成果を出すのか、シチュエーションに合わせた技術検証を行うなど上司の指導のもと学びの多い内容でした。
長く発展し社会に使われる技術を生み出す。
現在は、液体検査プロジェクトで検査装置の研究・開発にチームで携わっています。液体中の異物検査を行う処理のうち、私は検出された小さなものを動きの違いで異物か否か見分けるための時系列データ識別の技術を担当しています。メンバー間の調整やお客さまと協力しての技術実証など苦労する点も多いですが、自分の作った技術が製品の一部として役に立つことを想像しながら尽力しています。
これまでの研究の中で、実験1個1個に時間をかけすぎずに数を打っておくことが、より良い成果を出すために重要だと分かってきました。複数のテーマを抱える中で実験の質を保ちつつ短い時間で効率的に研究を行うことは大変ですが、必須と思い試行錯誤しています。目標は、NECの強みになるような認識技術を自分の手で生み出すことです。変化の速い分野なので難しいですが、長く進化しながら使われる技術を作ることで、私も楽しく研究しつつ、チームの活動の柱になれればと思っています。